人材育成コラム

“人財”育成のツボ

2009/08/26  (連載 第4回)

自ら学び、気付いたことは、身に付く!(2)

ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタント / PSマネジメントコンサルティング 代表

安藤 良治

 前回(こちら)は、あるIT企業の新人研修の一日をご紹介しました。
 今回はその続きです。新入社員研修の中でも特徴のある「3分間スピーチ」についてご紹介します。

訓練により格段にプレゼン力が向上

 3分間スピーチは、以下の6つのテーマで毎朝1チーム(6人程度)が行います。
 ①「学生時代に学んだこと」
 ②「日本経済新聞(総合・経済)記事より」
 ③「日本経済新聞(国際)記事より」
 ④「顧客の顧客を考える」
 ⑤「配属先紹介」
 ⑥「自由テーマ」

 日本人はプレゼンが苦手、人前で話すのが下手とよく言われます。しかし皆さんのスピーチを聞いて、若いうちに経験を積めば相当にうまくなるということを確信しました。
 特に、普段チームの中でも発言の少ないメンバーが堂々と発表する姿を見て、訓練すればある水準までは到達することができることが分かりました。

 3分間スピーチの運営で心配なのは「準備不足で、いい加減なスピーチをする人が現れないか」ということです。いったん悪い方向へ乱れてしまうとメンバーの間に連鎖反応を起こし、思うような運営ができなくなる恐れがあるからです。

 しかし、ありがたいことに2年間担当させていただいて、一度もそのようなスピーチはありませんでした。
 これには、良い意味での緊張感を持続する工夫が2つあったことによるものと思われます。

 一つは、行われた3分間スピーチをビデオで撮影してその日のうちに編集し、会社幹部や配属先の上長が見られるよう、顧客側で環境を用意していたことです。
 後でビデオを見る人のことを考えれば、いい加減なスピーチはできません。自然と良い緊張感を持続できる環境ができあがっていました。

 もう一つは、スピーチに対するコメントを新入社員同士で行うようにしていたことです。他人が行ったスピーチにコメントするのも立派な訓練の一つです。かといって、悪いところだけを指摘するようなコメントは、決して気分の良いものではありません。
 「良かった点を褒める。そして改善ポイントを指摘する」── こうしたコメントができるようになれば発表者も気分よく指摘を受け入れ、次回に反映しようと努力します。

 いつの間にか、コメントした人たちの締めくくりの言葉は「ありがとうございました」となっていました。これは、「今日は良いスピーチを聞かせてくれてありがとう」という素直な気持ちを表現したものだと思います。

 私は、この3分間スピーチを聞くことがとても好きです。若い人たちの素直で前向きな姿勢に出会え、とてもすがすがしい気持ちになるからです。

 ※ 次回は、新人研修でのPBL(Project-Based Learning)型演習についてご紹介します

(※この記事は2009年8月7日に「iSRF通信」で配信された記事を元にWeb掲載用に編集したものです)


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