人材育成コラム

リレーコラム

2010/12/16 (第9回)

あるITベンダーの研修で受けた刺激

ITスキル研究フォーラム 理事
フロネシス経営研究所 主宰/富士ゼロックス総合教育研究所 アドバイザリーフェロー

出馬 幹也

 先日ある大手ITベンダーで、SEの方が大勢集まるフォーラム形式の研修が あり、その全体的なコーディネートなどを依頼された。詳細を述べることは守秘 義務や本稿の字数制限も有り控えたいと思うが、特段に感じた点を少し、一般化 してここに記してみたいと思う。

 フォーラムのテーマは「人材育成」であり、資格取得や研修などの側面からで はなく、あくまでも現実的なプロジェクト実行における人材の成長促進、という 側面に焦点をあてた議論がメインとなっていた。その点だけをとらえても、この 企業のマネジメントが持つ、眼力の秀逸さが理解できる。

 実際、人が育つのは実務・実業での成功・失敗、それらからの”内省”のいか んによるものだ。プロジェクトマネジャーおよびその下の業務リーダーを中心と して、そもそもの役割分担や、日々の業務確認と相談、問題・課題への共同検討 など、きちんとしたマネジメントが行なわれることで職場内に育まれるチームワ ークが人に安心感をもたらし、内省からの成長へと促していく。

 その企業のフォーラムには多数の若手エンジニアも参加しており、有能なプロ ジェクトマネジャー達の発表や意見交換を目の当たりにして、多くの刺激を受け ていたようである。自らがリーダーになったとき、何をどの様に判断していくべ きか、発生した問題にどう対処していくことが求められるのかなど、現実的な事 例をもとに熱っぽい語り合いが進められた。コーディネートする立場の私自身に とっても新鮮な驚きであるほど、目を輝かせて質の高いプロジェクト運営の技を 学び取ろうとする若者達の姿勢に、感動を覚えた半日であった。

 「現場力」ということが指摘され、経営テーマとなって久しい。当然そこに必 要なのは、期日までにお客さまに期待されたアウトプットを提供する事が第一と なる。しかし、そのためのテクニカルなプロセスに走る以前に、一人ひとりがや る気を高め、成長しようという強い気持ちを維持し、互いのちょっとしたことに 配慮を重ね、チーム一丸となって大きなハードルを乗り越えていくこと。そして、 それを束ね、未来志向で皆を目的・目標に向けて意欲喚起していくリーダーの存 在こそが先ず担保されていかなければならない。そうでなければ、すべては”砂 上の楼閣”でしかないのではないか!?

 素晴らしきIT企業のフォーラムに参加させていただいて、そのようなことを 改めて考え、感じさせられた次第である。

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