人材育成コラム

リレーコラム

2019/05/20 (第108回)

相互啓発型がサービス事故を防ぐ

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社日立アカデミー 取締役

石川 拓夫

 安全診断プログラムというのがある。労働災害をなくす取り組みの一環で、診断によって課題を見える化し対策するものである。ある世界的な企業の基準に従い診断を行うものだが、その考え方に共感するところがあったので紹介しておきたい。

 安全行動には以下の段階がある。

(1)反応型 ・・・ 本能的な危険回避(本能)
(2)依存型 ・・・ ルール・指示には従う(監督)

 以上が受動的な安全行動

(3)独立型 ・・・ 自分の安全は主体的に守る(自己)
(4)相互啓発型 ・・・同僚の安全も意識し行動する(チーム)

 以上が自律的な安全行動で

 労働災害率は、(1)が大で、(4)が小となるそうだ。当然安全戦略では(4)をあるべき姿としてめざす。

 これを見てはたと思ったのは、当社内で起きるサービス事故にも当てはまるのではないかということだ。ただマニュアルや指示通りに業務を行っても、受動的であれば事故はなくならない。まずは個人による事故回避だが、事故率を可能な限り極小化するために目指すところは、チームで声かけしながら相互に啓発しあう組織風土だということだ。これは当社内でサービス事故防止のために、常々従業員にお願いしていることと同じだった。労働災害防止の観点からのめざす姿と同じと確認し、意を強くした次第である。

 自分だけでなく、越境してでも相互に声かけし、サービス事故を未然に防ぐ。やはりチームによるセーフティーネットはこれに勝るものはないのではと思う。もちろんマニュアルも大事なので整備する必要はあるし、システム化でヒューマンエラーの発生するプロセスを削減することも大切だが、事故を起こさないという意識と、能動的に相互啓発で事前に事故の芽を摘む取り組みは、エンゲージメントにもつながり、働きやすい職場にもつながる。また多大な工数をかけてのプロセス管理強化や重厚なシステム化に比べて、実現できればなによりもエコであり、サスティナブルである。

 サービス事業者にとって、サービス事故はブランド毀損とともに業績の足を引っ張る痛いものだ。お客さまとお約束したサービスが、当方のミスで提供できていない状態は、あってはならない。万が一発生したら、第一にお客さまに迷惑をかけない対応を可能な限り早く行うが、この対策には予定外の工数がかかるし、通常業務にも支障をきたす場合もある。撲滅に向けて日々対応を行っているが、軽微なものも含めるとなかなかなくならない。撲滅するには、越境してでも声かけしながら相互啓発で仕事を進めることだということをあらためて共有して、具体的な取り組みに落とし込んで取り組みたいと思う。



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