人材育成コラム

リレーコラム

2019/11/20 (第114回)

SNSの新たな潮流。54字でつづる超短編小説

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社アイテック 顧問

福嶋 義弘

 54字の短い文字数で作る30秒で読める超短編小説が流行している。流行のきっかけは、2018年3月に株式会社PHP研究所(以降PHP研究所と呼ぶ)より発行された、「54字の物語」である。著者は氏田雄介氏、1989年生まれ、大学卒業後インターネット、SNSを活用した広告やコンテンツ企画や制作の株式会社考え中を設立した企画作家である。2019年8月までに各90話で4巻が発売され、シリーズ累計販売25万部を達成している。流行をけん引したのはSNSである。特にTwitterで投稿が増えた。また、PHP研究所は公式サイトでジェネレーターを公開し投稿を呼びかけ、傑作を選ぶ「54字の文学賞」を開催、2019年9月までに5回実施された。

 「#インスタ小説」とも呼ばれ、各種メディアでも取り上げられており、SNSを活用したイノベーションであり新規モデルとして興味を持ったのでコラムに載せた。

 基本ルールは簡単で次の2点である。このルールを守れば、物語の内容は自由である。
1.文字数は54字ピッタリに収めること
2.句読点やカギ括弧も1字と数えること(ただし、最初の1マスは空けなくてよい)
 ルールはシンプルであるが、難しいのはテーマの選択と物語の内容を54文字に収めることで才能がいる。そのうえ、読者に考えさせる、最後の結びは難易度を増している。
 なぜ、54字なのか、「インスタグラムで楽しめるようなテキスト作品を作りたいと思ったのがきっかけです。 試行錯誤の結果、インスタグラムの(画像投稿の)正方形の枠に収まって、可読性が高く、ある程度内容も詰め込めるのが、9マス×6行の54字でした。」と作者は説明している。

 PHP研究所が用意した、学校向けプリント「54字の物語を作ってみよう」の参考例を示すと、「先日研究室に送ってくれた大きなエビ、おいしかったよ。話は変わるが、例の新種生命体のサンプルはいつ届くのかね?」、また傑作選で選ばれた作品「注文した覚えのない商品が大量に届いた。一体誰がこんなことを。『オッケーグーグル』ペットのインコがそう言った。」いずれも54文字である。確かに奥深く、理解するには想像力が必要でパズルを解くような不思議な感覚で面白い。

 今後、「54字の物語」が盛んになり、俳句や川柳と並ぶ文学になる可能性がある。企業でも推理力、観察力、想像力、問題解決力などが鍛えられると考えられ研修に活用できるのではないか。特に、DX推進に苦慮するなか、「54字の物語(DX編)」などの文学賞を開催、推進も盛り上がるのではないか。

 最後に小生も挑戦してみた
 「複雑化・ブラックボックスの既存システムを廃棄や塩漬けにする等の仕分け、刷新するDX。そのシステム全体誰把握?」
 出来はともかく、物語を作るにあたり、現状の状況を短く簡潔な文章にまとめ。その中の課題により発生する可能性のある問題を読者に想像させるよう、投げかける文章にする。こんな要領で作ってみた。現状把握、リスク分析、対策までは至らないが課題整理につながると思う。問題課題解決のツールである「なぜなぜ分析」に変わる手法に応用できるのではないか。

 PHP研究所では、小・中学校、高校、大学などの学校関係、福祉施設、公共施設での知育・学習・教育活動の補助教材として活用促進しているが企業でも活用可能である。
 頭の体操にもなる。ぜひ、皆さんも挑戦してほしい。



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