人材育成コラム

リレーコラム

2012/08/20 (第30回)

偽りのリーダーシップスタイルは捨てよう

ITスキル研究フォーラム 理事
フロネシス経営研究所 主宰/富士ゼロックス総合教育研究所 アドバイザリーフェロー

出馬 幹也

 経営者候補を養成する仕事をしていると、偽りのリーダーシップを信じ込んで いる経営者候補が思いのほか多いことに気づかされる。

 偽りのリーダーシップとは何か。端的に申せば、組織の中で、経営者や管理者、 仲間同士の“不信感”を生みだすリーダーの発言、姿勢のことである。自分がそ れに毒されていることに気づかないまま、スタイルを変えようとしない自称リー ダーがいかにも多い。

 そのようなリーダーの中にあるものを考える。それは、“偏り”をつくってし まう思考にほかならない。業績数字への偏り、短期結果への偏り、YESマン部 下への偏り、トップダウン的な指示命令への偏り…。そして何よりも、自らを生 き延びさせようとする保身という結果への偏り。それをいつの間にか創り出し、 示してしまうということだ。

 真のリーダーシップをもつ人材の内面はまったくそれとは異なる。原因と結果、 量と質、業績と育成、思考と行動、理想と現実、戦略と実行…。一見、二項が対 立するような状況の中で真のリーダーは、矛盾らしきことも調和的に解決してい くということに一歩も引かないのである。

 周囲の様々な意見に耳を傾け、世の事象とその奥にあるものに深く関心を寄せ、 表面的な理解に留まることなく、常に自らの「ものの見方・考え方」を、多面的 で、偏りなきものへと昇華していく。

 透徹した思考、奥深い共感、関係先の理解・納得を作り出す対話が、真のリー ダーシップの中核能力であり、それを体現する人材によって、偏り無き、持続可 能な組織成長は可能になる。

 求められる目標達成を目指し、難事を乗り越える調和的解決を駆使しながら、 現場の戦略実行へと人々を牽引していく真摯なリーダー。そのような人材にメン バーは感動する。そのような人材が持つ、高潔な人格に共鳴し、一歩前に出よう とする同志を数多く引き寄せていく。

 皆が深く納得する「シナリオ」を描き示し、自らの“姿”でその意味を体現し 続けていくリーダー。この国に今こそ必要なのはそのような人材だ。

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