人材育成コラム

リレーコラム

2013/08/20 (第42回)

「クラウド人材」とは ~WGを振り返って~

ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
NTTコミュニケーションズ 西日本営業本部 担当部長

中山 幹公

 昨年春にITスキル研究フォーラムのクラウド人材ワーキンググループ(WG)の主査を拝命し、約1年間活動させて頂きました(当時は弊社クラウドサービス部に所属)。その縁から、リレーコラムの執筆担当者のひとりとなりました。よろしくお願いします。

 第1回目となる今回は、上記のWGが発足した背景とスタート時の話などについて書いてみたいと思います。
 「クラウドコンピューティング」という言葉はここ数年、IT業界において大きく取り上げられました。最近では、業界に留まらず一般社会でもすっかり定着したと言ってもいいでしょう。当然、企業への実際の浸透度合いについての見方はいろいろあります。しかし、ここにきて、いまだに「バズワードだ」「一時のブームだ」などと言っている御仁は見識を疑わざるを得ません。
 とりわけ、我々IT業界のビジネスにとっては大きなパラダイムシフトをもたらす概念であり、これによりIT人材に求められるスキルも当然変わってきます。そこで、「クラウド時代に求められるIT人材のスキル」を整理し、体系化してみようというのがWGの発足理由でありました。

 自分の事はさておき、クラウドに見識の深いWGメンバーが集まり、昨年4月に初回ミーティングの開催となりました。メンバーは以下の通り。
   横地氏(沖アドバンストコミュニケーションズ:当時)
   佐藤氏(日本マイクロソフト)
   八子氏(デロイトトーマツコンサルティング)

 言葉そのものは定着してきたと言っても、「クラウド人材」の前に「クラウド」について、その人の置かれている環境などにより思い描く概念が異なってくるでしょう。おそらく、今でも、この状況に変わりはないと思われます。
 例えば、真っ先に「Facebook」などを思い浮かべる人もいれば、一方で企業の社内に設置されたサーバーを仮想化することだと捉える人もいる…という具合に。
 後者のように、もしクラウドをサーバーの仮想化だと捉えてしまえば、「クラウド人材」とは「サーバー仮想化のスキルを持った人材」ということになります(もしそうならば何もWGを作るまでのことはない訳ですが)。

 このように「クラウド」の捉え方をメンバー間で合わせる必要があり、まずはそこが苦労するかもしれないと想定していました。ところが、これについては第1回ミーティングで思いのほか簡単に全員の意識が合ったのです。
「『クラウド』とは、単なる新技術などではなく、これまでのIT業界の構造を根底から一変し、さらには個人の働き方まで変えてしまうようなビジネスイノベーションなのである」
 そのことが感覚的にわかっているメンバーが集まったことは幸運だったと思います。余談ですが、そのおかげで世代や会社はまちまちでもなんとなく意気投合し、初回のミーティング後の懇親会もたいそう盛り上がりました。

 活動開始時に合わせた前提意識としては以下のようなものでした。
  • 「クラウド」は単なるサーバーの仮想化ではなく、ネットワーク経由で「サービスとして」提供されるものと捉える
  • 大企業向けサービスから個人向けサービス(ゲームなどを含む)までも想定
  • ハードウェアリソースからソフトウェアリソース、さらにはそれらをマルチに提供するものまでも想定
  • クラウドサービス提供事業者には、一部他事業者のサービスを利用しているようなケースも多く、提供者でもあり利用者でもあるということも想定

 WGでは、まずはこれまでのスキル診断の仕組みで使われた多数のタスク・設問の中から、「クラウド人材」に必要と思われるものを抽出するとともに、不足しているものは新設し「クラウド人材のスキル診断項目案」を作成していった訳です。
 この続きと考察は、WGメンバでもありまさにクラウドの第一人者と言ってもいいデロイトトーマツの八子氏に次回コラムで語って頂こうと思います。実は、私とともに、八子氏もリレーコラムの執筆者のひとりとなり、次号のコラムを担当することになっています。乞うご期待。

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