人材育成コラム

リレーコラム

2013/10/17 (第44回)

CSRとは?

ITスキル研究フォーラム 理事
日立ソリューションズ CSR統括本部 ブランド・コミュニケーション本部 本部長

石川 拓夫

 7月に約30年務めてきた人財部門から初めて異動になった。異動先は、ブランド・コミュニケ―ション本部である。この部門は、宣伝・広報・ブランド・CSRを担当する。全く新しい分野で、この3カ月は勉強の毎日であった。30年同じ分野の仕事をしてきたことも稀なのだろうが、この年齢で新しい分野へ異動するとは思わなかった。少々心残りはあるが、「定年まで楽をするな!」「もう一仕事しろ!」ということだと自覚し、日々チャレンジだと思ってやっている。

 さて、先般さっそくCSRの研修へ行ってきた。CSRは、時代の変化に対応して変化している。正確には、CSRの重要度とその理解が変化しているというべきか。今までも社内の委員を務めていて、社内セミナーなどには参加していたが、知識は断片的である。包括的な基礎知識があってこそ、当社のCSRの在り方が考えられると思うので、しばらくは学ぶ必要がある。
 今回の研修は3回シリーズで、まずは「CSRとはなにか?」というところから始まった。書き始めると長いので、皆さんには参考になるところだけ、紹介したいと思う。

 CSRを一言で説明すると次の言葉がわかりやすい。
「企業に原点を置いて社会を見るという態度から、社会に原点を置いて企業の在り方を考えるという発想の180度の転換を行う必要がある」(1973年 経済同友会代表幹事 木川田一隆氏 所見)
 すなわち「社会視点で会社を見ること」というのが、なんとなく一番しっくりくるようである。
 CSRは、「企業の社会に対する責任をどう果たすのか?」が問われるものなのだろう。

 歴史的背景としては、次のような背景を学んだ。
 欧州の「小さな政府」への改革が、官による統制弱体化を招き、これを補うために民民統制強化を図った。この流れがISO26000に繋がり、進化して今や法律を補う、いや法律に変わる社会規範として世界へ拡がってきている。それがCSRであると。 
 このような背景や状況に対して日本はどうかと言うと、まだ寄付やボランティアと思っている経営者が多い。ところが、すでに新興国市場参入には、その国や地域に配慮したCSR的な観点での表明や行動が欠かせなくなっている。ここを軽視し日本流を持ちこむと、バッシングを受けて社会的制裁を受けることになる。またCSR的な観点でビジネス創出するのが成功の道とも言われている。CSRは新興国ビジネスのみならず、グローバルビジネスを推進する企業にとっては、経営そのものになってきていると言える。

 CSRには「攻め」と「守り」がある。「攻め」は「機会」である。社会に対して当社らしい価値を創造・提供して、社会の要請に応えることで、ステークホルダーとともに栄えることである。「守り」は「リスク」である。CSRが法では規制しきれないところの社会規範化しつつあるのであれば、これをしっかり守らなければならない。
 読者の皆さんに特に伝えたいのは「攻め」の面である。CSRはイノベーションのトリガーになる可能性があるということである。今や業界挙げて、イノベーションと言うか、新事業創出が大きな課題だろう。その重要な視点にCSRがなるのである。社会に対して、自分達らしい新しい価値創造を通じて、期待に応えようとする視点こそ、新事業創出につながる「遠回りに見えるけど近道」だと思うようになってきた。

 如何だろうか。これでCSRが少しだけ違うものに見えては来ないだろうか?

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