人材育成コラム

リレーコラム

2013/12/17 (第46回)

コミュニティで学ぶクラウドのビジネススキル

ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
NTTコミュニケーションズ 西日本営業本部 担当部長

中山 幹公

 「クラウド」はICT業界における新たなビジネスモデルであり、新たな技術でもある。そのクラウド事業に、ICT業界の様々な領域の企業が参入し、群雄 割拠という状態になっている。
 様々な違いはあれど、各社がそれまで培ってきたコア事業でのビジネスノウハウや技術、人材を活かして新たな領域に参入しているわけである。しかし、前回 のコラムで述べたとおり、当然それまでいた領域によりクラウドをやるために新たに獲得すべき技術・スキル・ノウハウは違ってくる。
 そうした新しく獲得する必要がある様々なスキルを、企業の中にいる個人はどのように伸ばしていくべきであろうか。

 そもそも、クラウドのような新しい分野では、社内に元々そうしたスキル保有者がいない訳であるから、OJTで先輩からスキル移転がされることも期待でき ない。これまでのように企業の人事部が研修メニューや教材を作って、それを履行することで獲得するのであろうか。
 もちろん、企業の人事育成部門のみなさんはそうした新しい分野のスキルアッププランの作成に早期に着手すべきではある。しかし、クラウドのように急速に 伸長している分野のスキルをつけるには、そのような動きを待っていては市場から取り残されてしまうだろう。
 この時代、個人は企業からスキルを与えられるのを待つのでなく、自ら今後市場で必要になるであろうスキルを感知し、自らそうしたスキルを獲得していく、 勘のいい自己研鑽努力がますます重要になっている。

 ソフトウェアエンジニアの世界では従来、新たなプログラミング言語や、大手ベンダーの人気ソフト等に関するコミュニティが存在し、そこに様々な企業のエ ンジニアが自由に参加し、自己研鑽を積んでいる。こうしたコミュニティはベンダー側主導であったり、エンジニア側主導であったり様々である。
 クラウドの世界でも、AWSやセールスフォース、マイクロソフトなど大手外資系のクラウドベンダーやそのユーザなどが運営するコミュニティが存在する。 またOpenStackやCloudStackなどクラウドオペレーションのオープンソースに関するコミュニティも活動しており、ともに主にソフトウェア 開発系のメンバーが多く参加している。
 もちろん、こうしたコミュニティを通じ、ベンダー側はそのソフトウェアやベンダーの「ファン」作りと知名度向上が図れる。一方エンジニア側も、今後多様 されるソフトウェアの技術をいち早く習得でき、自身のスキルアップも達成できるというわけだ。
 こうしたコミュニティ活動は、どうしても東京中心となりがち。しかしクラウドに関しては、私がいま仕事をしている大阪でも、実は様々なエンジニアが集う コミュニティが存在しているようである。

 ところで、本コラムのタイトルである「ビジネス」サイドではどうだろうか。クラウドは技術の変革であるのはもちろんだが、同時にビジネスの変革でもある。 とすれば、ソフトウェアなどのエンジニアだけでなく、様々な立場の個人がスキル変革を求められているのである。そう考えると、ビジネス面つまりマーケティ ングやビジネス企画、アライアンス戦略、プロモーション…などなどにおいても新たなスキルを身につける必要があり、そうしたコミュニティも重要だというこ とになるだろう。

 さて、先日、そうしたクラウドのビジネス面にも重きを置いたコミュニティが大阪で開かれた。前回からリレー形式でコラムを書いている八子氏が、個人で主 宰する「八子クラウド座談会」である。このコミュニティはこれまで主に東京で開催されてきた。去る12月14日(土)にも第12回のコミュニティが開催さ れた。
 私も第4回あたりからちょくちょく参加している。大阪では、私がこちらに来た後、eBASE株式会社の窪田取締役と私が幹事役を勤め、2回開催させてい ただいた。
 ちなみに大阪での第二回座談会のAgendaはこんな感じである。(約80人が参加し、懇親会含め大いに盛り上がった!)
  http://www.zusaar.com/event/1307005
 これまでの営みについてはこちらを参照願いたい。
  http://85cloud.com/
 この座談会は土曜日に開催されることもあり、みなさん個人として参加している。八子氏や実際にクラウド事業をされている各回の登壇者から、クラウドの最 新動向を学ぶとともに、ワークショップ形式で毎回いろんなテーマについて語り合い、発表するという形態である。もちろん終了後は懇親会で熱く盛り上がる。

 この座談会には、経営者、エンジニア、マーケッター、セールスなど様々な立場の方が参加している。活発な議論はもとより、各自の自己研鑽とともに人脈の 拡大、さらには実ビジネスへ発展するケースもある。
 クラウドのビジネススキルを取得するには非常によい場なのである。これからは、このような企業の垣根を越えたコミュニティでのスキルアップを企業が後押 しするという考え方も必要だろう。
 東京ではおそらく来年の春頃に第13回が開催されるであろうし、大阪でも来年第3回を開催したいと考えている。このコラムを読んだ方は、ぜひ顔を出して みてはいかがだろうか。少なくとも、いい刺激を受けて帰ることは間違いないだろう。

 今回はこの辺で失礼する。次号のこのコラムでは、この座談会を主宰する八子氏自身から座談会について語っていただこうと思う。

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