事例レポート

(※ 過去バーションのDSシリーズでの利用事例を含みます)


ITSS-DS事例


沖ソフトウェア

2003年からITSS(ITスキル標準)を反映した職務グレード制を運用し、2006年からはスキル診断に「ITSS-DS」を採用して人材育成戦略に活用している沖ソフトウェア。そのITSS導入の経緯と目的、行き当たった課題についてうかがった。
  • [インタビュー]
  • 総務部 部長 小幡 哲郎氏 氏
  • 総務部 企画チームリーダ 佐藤 圭一 氏

聞き手 田口 潤(ITスキル研究フォーラム 代表)
文中敬称略 (所属、役職等は記事掲載当時のものです)

2008年9月26日掲載

ITSS-DS事例


沖ソフトウェア

個人のスキルの強みと弱みを明らかに。診断結果はキャリア設計の貴重な指針

2003年からITSS(ITスキル標準)を反映した職務グレード制を運用し、2006年からはスキル診断に「ITSS-DS」を採用して人材育成戦略に活用している沖ソフトウェア。そのITSS導入の経緯と目的、行き当たった課題についてうかがった。
  • [インタビュー]
  • 総務部 部長 小幡 哲郎氏 氏
  • 総務部 企画チームリーダ 佐藤 圭一 氏

聞き手 田口 潤(ITスキル研究フォーラム 代表)
文中敬称略 (所属、役職等は記事掲載当時のものです)

2008年9月26日掲載


── ITSSを導入しようとする時、そのまま全部を自社に当てはめても必ず齟齬が生じる。それで「当社には合わない」と、導入をあきらめてはいないだろうか。


「スキル標準」の壁 【そのまま使うことは考えなかった】

田口 ITスキル標準は2002年末に公表されました。その頃から着目していましたか?
佐藤 はい、ウォッチしていました。
田口 出たときの第一印象は?辞書みたいにかなり膨大な資料ですけど?
佐藤 これが出来てくれたことはいいなと思いましたが、問題はボリュームでしたね。これをそのまま社内に持ってくることは出来ないので、いかに縮小版、エッセンスを凝縮して使っていこうかを考えました。実は、社内には、すでに沖グループとして、グレードを評価する職務評価基準はあったのですが、それは大雑把なものでした。一方、当社はソフト会社なので、よりソフト会社らしい基準が作られるべきであろうと考えていました。しかし、一から考えるのは大変なので、どこかにいいものはないかなとリサーチしていたわけです。
田口 職種の定義とかレベル感はいかがでしたか。
佐藤 もともと職務グレード制は、沖電気で職種の定義がなされていたのですが、非常にざっくりしていて、SEとかソフト設計開発職とか、そういうくくりなのですね。しかし、職種分類があんまり広過ぎると、これはいったい、何を、どういう人を、どう評価しているんだかわからなくなってしまいます。

総務部 企画チームリーダ 佐藤 圭一 氏

 一方、細かく定義しすぎても、それもどうなのという問題も出てきます。だから、世の中基準というものをベースにした方がいいだろうということを、まず基本的な考え方としました。世の中基準を探す中でITスキル標準を見つけたわけですが、それだからと言って、それをそのまま引用、流用しようとする考えはありませんでした。より当社にフィットした感じでカスタマイズして入れようと考えました。何かやろうとする時に、当社ではそうした発想をします。世の中基準をベースにする。そして、参考にしたものを自社らしくカスタマイズする。この2つは、当社が何かをする時のコンセプトに必ず入ってきます。

総務部 企画チームリーダ 佐藤 圭一 氏


── 導入には、ある程度の時間を要する。しかし、何年もかけても良い訳ではない。スピーディに導入するための秘訣はあるのか。


時間の壁 【トップとの議論を通して最初のフレームをパシッと】


田口 ITSSを反映した職務グレード制の導入にはかなり苦労されたと思いますが、いかがでしたか?自社の区分にあわないとか、多分いろんな考えを持ってらっしゃる方が結構おいでだと思いますが。社内ヒアリングはどうでしたか。
佐藤 まず、職場へのヒアリングはかけなかったですね。
田口 えっ!そうなんですか。
佐藤 職場へのヒアリングをかけると、結局、自分たちにフィットした解釈になったり、個別の問題点が出てきたりとか、収拾が付かなくなるんですよ。そこで、全体最適を考える立場の経営者や経営企画を考えるようなスタッフたちと討論して固め、固まった段階で、職場の長に対して意見照会をかけるようなプロセスで進めました。
田口 それでは、ITSSをベースにした沖ソフトさん流のスキル標準を作るのにどのくらいの時間をおかけになったのですか?
佐藤 検討を始めてから、ドキュメント化してオープンにするまでとすると2カ月くらいです。
田口 意外と短いですね。へたすると数年かかってもできないケースがありますからね。
佐藤 そうですね。
小幡 そこのところは最初の入りのところだと思いますね。経営者など経営の方向性を語れる人と最初にやらないで、現場の方からヒアリングを始めてしまうと、いつまでたっても結論がでないですね。
田口 とは言え、人事制度を見直す時は、けっこう軋轢があるかなって思うのですが。
佐藤 最初のフレームをパシッとしておけば、後は微調整というか、改善と捉えてもいいのですが、フレームに組み込むドキュメントなどは、手直していけばいいというスタンスです。考え方のところには時間を使いますけどね。改善する上でフレームとか骨格にまでかかわる場合は、トップマネジメントの人と話します。一方、職場に展開した以降は、モニタリングをかけたり、ローカルな情報交換をしたりして現場の情報を吸い上げています。必ずしも制度に反映するとは限らないのですが、それを、職場に浸透させる時に考慮すべき情報として活用しています。

── 現場からすれば負荷になるスキル診断。しかし導入には必要なステップである。社員をその気にさせるためにはどう言えばいいのか。

診断の壁 【現場の負荷は少ない「たった30分でできる」。結果もすぐわかる】


田口 それでは、スキル診断を実施してみようというきっかけは。
佐藤 ITSSは世の中のスタンダードになり得るし、評価にも使える。しかし自己満足の制度や評価では良くないという問題意識からです。当社の経営トップがその辺も捉えて、人材育成にITSSが使えることは知っていて。ITSSを評価に使っていることは分かっているが、世の中のきちんとしたITSS完全準拠のシステムでレベルを計っておいて、それも単独ではなく、既存の社内の制度と連携をとって検討しておいたほうがいいよ、とアドバイスをしてくれました。そこで他社、IT業界と自社を比較できるスキル診断ツールを探したんです。
田口 でも、現場の方々は、突然に診断受けろと言われても、時間もかかりますし、集中力もいる。つまり、それなりに負荷がかかる。現場からこの忙しい時、止めてくれという声はなかったですか?
佐藤 「ITSS-DS」についてはそういう声は限りなく少ないですね。社内でいろいろなWeb診断があって、スキル系でも、10数年前から社内にあって、もっと膨大なものがあるんですよ。「ITSS-DS」は「たった30分でできる」って言いました。
田口 私が言うのはあれですが、30分ではできないですよ。私は40分かかった。

総務部 部長 小幡 哲郎 氏

総務部 部長 小幡 哲郎 氏

小幡 だけど、入力をしたらきちんと自分に関するアウトプットが出てきますよね。スキルレベル以外にも、人材タイプ分析とか、強み弱みみたいなコンピテンシー部分みたいな、アドバイスもちゃんと出てくる。それが出てくるんだったら入力してもいいなって思う。やる前には、こんなのが出て、試してもらった人たちから好評だったとか、ぴったり本当に出る、とか言いました。
田口 そういうことを事前に言っているんですね。
小幡 それはちゃんと言います。過去から実施している自社の色々な診断から比べると、入力時間が少なくてアウトプットが、個人向けのものがちゃんと出る点は本当に評価しています。
佐藤 最初は、みんな「またなのっ」っていう感覚なので、「たった30分で出来ますよ」って初めはそのくらい短いほうから言いました。だから「じゃあやってみようか」となりますよね。そうすると全体の傾向分析も出来て、どの支社とどの支社がどうだとか、そして適正職種の・・。
田口 えっと、そういうデータは公開するんですか?
佐藤 全部公開します。
小幡 ここの部はこうでした、ここの支社はこうでしたと。
田口 それは支社の平均スキルレベルとかですか。
佐藤 ええ。それはもう隠し立てしてもしょうがないし、一種のある断面だし、公開してもいいと考えています。