人材育成コラム

“人財”育成のツボ

2009/07/30  (連載 第3回)

自ら学び、気付いたことは、身に付く!(1)

ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタント / PSマネジメントコンサルティング 代表

安藤 良治

 昨年から私は、あるIT企業の新入社員研修を3ヶ月間担当させていただいています。その研修を通じて「教えることは容易い、教わったことはすぐ忘れる」「学ばせることは難しい、自ら学び、気付いたことは、身に付く」と痛感するようになりました。
 今回から数回に分けて、その新入社員研修の様子を紹介したいと思います。
 研修対象者は、約40名。コンピュータ未経験者もいれば、かなりの経験者もいる構成です。

新入社員研修の一日

8:45(当番との朝の連絡会)
 新入社員研修の一日は、当番チーム、クラスマネージャー(顧客企業教育ご担当)と講師の朝の挨拶からはじまります。
講師控室にメンバーが集まり、私の司会で「今日のスケジュール」、「連絡事項」、「当番からの質問」を確認し、「今日も一日頑張りましょう、よろしくお願いします。」の挨拶に続き、全員が「よろしくお願いします」と元気な声を出して一日がスタートします。
9:00(ラジオ体操)
 当番チームが前に出て、全員でラジオ体操
9:05(朝の挨拶とクラスルーム)
 当番の「おはようございます」の挨拶に続き、全員で「おはようございます」と、3ヶ月間毎朝元気な挨拶が続きました。
 クラスルームは、当番が運営します。事前に確認した連絡事項を当番から、全員に伝達し、徹底します。
9:10(3分間スピーチ)
 昨年に引き続き、感動するスピーチが沢山ありました。
 若い人たちの素直な気持ちに出会い、若い人たちから学ぶことの多い充実した時間です。
 40人×6回のスピーチがありましたが、一人として、いい加減なスピーチはありませんでした。これには、ちょっとした顧客企業の工夫があります。詳細は、次回に紹介します。
9:30(今日の言葉)
 今年から、講師が分担して、その時期の新入社員の心境や、カリキュラムの進行も考慮しながら、白板に今日の言葉を書いて解説しています。
 ちなみに、私の今日の言葉をいくつか紹介すると「兵学者と兵法家」、「IメッセージとYOUメッセージ」「OK!」、「劇的な転換は、ゆっくり進む」、「人生の結果=考え方×熱意×能力」等々。
 経営書や心理学、社会学、問題解決法など引出しから引っ張り出し、この研修が目指していること、皆さんに会得してもらいたいことを伝えてきました。
 講師は私の他に2人おり、それぞれ個性のある今日の言葉を紹介することができ、新入社員も毎日メモを取りながら、楽しんでくれていたようです。新入社員の3分間スピーチにも、随所に今日の言葉が引用されていました。担当の前日は何を話そうかと悩まされる「今日の言葉」でしたが、講師にとっても鍛えられる良い機会となりました。
9:40(通常カリキュラム開始)
 最初の1ヵ月半は、コンピュータ基礎知識、ビジネススキルの習得、WEBアプリケーション開発実習を行いました。
 この研修の運営方針として、講師が繰り返し言ってきた言葉は3点「解を探すのでなく、解を導き出そう」(教わるのでなく、学ぼう)「頭にINDEXを貼ろう」(暗記するのでなく、探す力をつける)「顧客の顧客を考えよう」(システムは顧客の手段、顧客の目的は何か)
 これらの言葉を繰り返しながら、グループワークを中心にカリキュラムを進めてきました。
 グループワークでまとめた内容をグループ間相互発表をしたり、全体発表を行い、自チームと他チームのまとめ方の違いを確認し、それが刺激となって会議の効率良い進め方や資料作成時間の短縮に取り組んでいました。
 講師としてのコメントや補足は行いますが、基本的には模範解答を配布しません。
 学生時代は、答えを覚えることが中心の学習だったので、模範解答を配布しないことに相当な抵抗があります。しかしながら、職場に配属されてからのことを考えるならば、ここはじっと我慢と割り切り、最後まで配布しませんでした。
 すると、各自が参考書を持ってきたり、新たに購入して、不足する知識を補おうと努力をし始めます。最後には、各チームのテーブルには、かなりの数の辞書や参考書が並び「自ら学ぶ」姿勢が出てきました。
 「教えることは容易い、教わったことはすぐ忘れる」「学ばせることは難しい、自ら学び、気付いたことは、身に付く」教えてもらいたい新入社員に「自ら学ぶ」姿勢を身につけてもらうためには、講師陣にも忍耐が必要です。でも、それを理解してもらえた時が、彼等の成長を感じる瞬間でもあります。
 後半の1ヵ月半は、PBL(Project-Based Learning)型演習内容については、次号で紹介します。
15:00(週1回水曜日)リーダー会議
 各チームのリーダー、クラスマネージャーと私が出席して、週1回リーダー会議を運営しています。
>最初にリーダーから、現在のチームの様子を紹介してもらいます。グループワーク中心の研修のリーダーを担当しているのですから、責任も大きく、メンバーに気を配る毎日は相当大変です。困っていることは、何でも相談しようというムード作りを行い、かなり本音の意見が出てきます。
 ここでも、責任感のある若い人に接し、感心させられることが多くあります。
 リーダーの紹介の後、クラスマネージャーと私からコメントし、相談内容によっては個別に対応することで、問題の早期発見、解決に努めることができました。
17:40(終了クラスルーム)
 クラスマネージャーによる、一日の終わりの挨拶
17:50当番による整理・整頓・清掃
18:10(当番との連絡会)
 当番との挨拶にはじまり、当番との挨拶で終わる毎日です。
 ここでは、当番からの連絡事項を確認するとともに、その日当番に当たったメンバーから現在の状況を一言ずつ言ってもらいます。
 一言ずつに対するコメントを私が伝え、全員の紹介が終わった後、クラスマネージャー、講師全員からコメントを伝えます。
 日中は、グループワーク中心のため、この当番とのコミュニケーションが新入社員の現在の心境を把握する良い機会となっています。
 金曜日など、新入社員の親睦がある日などは、こちらが気にして「今日は一言コメント止める?」と聞いてみると、新入社員の方から「やりましょう」と積極的に言ってくるので、私たちの情報収集の場だけでなく、相互コミュニケーションの良い機会となっているようです。

 私は、研修運営全体とビジネススキルやヒューマンスキルの担当として、3ヶ月間毎日新入社員と接してきました。
 若い人から、多くの刺激を受けながら。(次回に続く)

(※この記事は2009年7月8日に「iSRF通信」で配信された記事を元にWeb掲載用に編集したものです)


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