人材育成コラム

“人財”育成のツボ

2014/12/18  (連載 第67回)

新時代の徒弟制度、OJL(On the Job Learning)の定着と実践 シリーズ(8)プレゼンテーション

ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタント / PSマネジメントコンサルティング 代表

安藤 良治

 30歳の頃、「プレゼンテーション」の研修を受講する機会がありました。
 当時は、400人を超える規模の採用の企画から運営までをまとめることが仕事でしたので、「どのようなプレゼンテーションが学生に関心を持ってもらえるか」が関心事項でした。必要に迫られていたこともあって、「プレゼンテーション研修」は、かなり鮮明に覚えています。
 プレゼンテーションの目的は、「定められた環境や時間的制約のある中で聞き手に対して、説明を行い、効果的な影響を与えること」という定義の後に
  「話した」、「伝えた」ではなく、
  聞き手が「理解する」ことが第一条件であり、
  「理解したことを行動に移す」ことが究極の目的
この言葉に大変共感し、私の記憶の中にしっかり刻み込まれました。

 いくらうまく話をしようとも、いくらきれいな図表で説明しようとも、採用の場面においては、聞き手である学生が「当社を第一希望として応募する」という行動に出てくれなければ、企業説明というプレゼンテーションの成功にはなりません。
 「どうすれば、そのようなプレゼンテーションができるようになるか」
 合同企業説明会などにも参加して、大手企業の様子を拝見したり、セミナーなどにも参加して、その運営や話し方を参考にすることもありました。
 イベント会社に企画を頼みプロの話し手を使っている会社もありました。
 確かにプロの話し手が話している様子は、人を惹きつけるものを感じました。導入から「笑い」を誘い、楽しい雰囲気の中から親しみを演出しているスタイル。そのような説明会を拝見すると、「うまいなぁ」とは感ずるものの自分が演出したいスタイルではないとも感じます。聴衆との「対話」をうまく組み込みながら、目的の方向に導こうというスタイルもありました。この対話方式には、共感したものの自分が進めるには「難易度が高いなぁ」とも感じました。

 他社のやり方を見学しながらも結局は、自社流というか自分達流を作るしかないと判断して、手作りの説明会を行うことにしました。
 今振り返ってみると、決してうまいとは言えないプレゼンテーションでしたが、「この会社で一緒に働こう!」との呼びかけや思いは詰まった運営ができていたのではないかと思います。私達のプレゼンテーションから、入社という行動をとってくれた学生がいたことも事実のようですから。
 その時に学んだプレゼンテーションが、現在の仕事のベースともなっています。企業研修では、対象が学生から社会人に代わるものの、
  「話した」、「伝えた」ではなく、
  聞き手が「理解する」ことが第一条件であり、
  「理解したことを行動に移す」ことが究極の目的
であることには変わりはありません。

 研修の目的を伝え、「教える」のではなく、「学習」の機会として学び、その中から少しでも実践で活用できることを見出してもらうことが、ラーニングファシリテーターである私の役割です。
 どの研修でもそうですが、場数を経験してきても「導入」では緊張します。
 ほとんどの場合、初対面の人達と過ごす訳ですから、最初にうまく掴めるかが、その研修の成否を決めると言っても過言ではありません。
 イントロで、「この研修面白そうだな」「やりがいがありそうだな」と感じてもらえれば、つまりこのコラムで何度か紹介している「ARCS動機付けモデル」のA(注意:Attention) ≪面白そうだなぁ≫が導入部で成功すれば、後は用意したプログラムを粛々と進めることができます。
 では、導入でどんなスタイルをとればうまく「掴む」ことができるでしょう?ジェリー・ワイズマンの著書「パワー・プレゼンテーション」に紹介されている効果的なスタート法が、以下の「7つの導入の言葉」です。
   −−− 7つの導入の言葉 −−−
  1.質 問   :  聞き手への質問
  2.事 実   :  特筆すべき統計、真実
  3.過去と未来 :  過去の話と未来の話
  4.エピソード :  興味を引くようなちょっとした逸話
  5.引 用   :  信頼ある人の推薦の言葉
  6.格 言   :  よく知られた言い伝え
  7.たとえ   :  複雑な話題をわかりやすく説明する表現
 プレゼンテーションの上手い人は、イントロにこの7つのどれかを用いていることが多いです。
 エピソードを面白く紹介しながら、話の内容に関連付けていく人。
 この人のイントロは、聴衆の笑いと共に親しみのある雰囲気づくりを行い、楽しみながら、先を進めることができます。
 事実をもとに数値を示しながら、話の内容に関連付けていく人。
 しっかりした論理展開と裏付けから、きりっと締まった雰囲気で先を進んでいくパターンもあります。
 私の場合「質問」というか、研修に関係する題材を使って最初に「発問」することが多くなりました。発問から、受講者のこれまでの苦労や工夫していることの情報を入手して、研修内容に関連付けていきます。
 この7つのどのパターンが、自分のスタイルに合っているか、いろいろ試す中で、自分のパターンが見つかります。導入部分で共感してくれる受講者が多いと感じることができたなら、後は研修当日までに準備してきた「教案設計」、「ストーリーボード」を実践することができると言っても問題ないでしょう。
 逆に言えば、本番で慌てないようにしっかりと準備して挑まなければ、良いプレゼンテーションはできないとも言えます。

 研修の内容によっては、新しい手法や内容の説明に時間を要するものもあります。この場合は、説明が単調にならないような工夫が必要です。
 私が担当している問題解決研修では、新しい手法・プロセスを解説するのに30分はかかります。受講者の反応を見ながら、できるだけ分かりやすく説明することを心がけていますが、何人かが首をかしげるようなしぐさをすると、軌道修正が必要になってきます。最近では、少なくなりましたが、「うまくかみ合っていないな」と感じる場面が発生することはあります。
 その時は、冒頭で紹介した「プレゼンテーション研修」で、学んだ一節を心の中で唱え自分に言い聞かせます。
 あせらずゆっくり SHOW SEE SPEAK
 慌てないでゆっくりと聴衆にスライドを見せましょう。そして自分は、聴衆を見て、一呼吸おいてから話し始めましょう。
 この言葉を思い出したとき、慌てだしていた自分のリズムの軌道修正をすることができます。一呼吸が適度な“間”を生み出し、受講者に理解できていることと理解できていないことの確認をします。この会話のキャッチボールが「双方向コミュニケーション」となり、原点に戻って「伝えた」かどうかではなく、職場に戻って「使える」か否かを問う学習の場にすることができます。

 さて2014年も残り僅かとなりました。今年もこのコラムをお読みいただきありがとうございました。このコラム“人財育成のツボ”も今号で67号となり、5年半も続けさせていただいています。
 今年4月からは、「新時代の徒弟制度、OJL(On the Job Learning)の定着と実践」をテーマにシリーズでお送りさせていただいています。このシリーズも次回で完結の予定です。
 ITHRDと一緒に展開している「OJLの推進」。2015年は、いよいよ本格的な展開期にしたいと思っています。
 来年が皆様にとって良き年となりますことをお祈りしております。
 ITHRDのホームページに「プレゼンテーション」のスライドを用意していただいたので参考にしてみてください。
http://www.ithrd.jp/index.php/blog/ojl/101-2014-12-08-itlfpresentation

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