人材育成コラム
“人財”育成のツボ
2016/10/25 (連載 第89回)
マーケティングのすゝめ
ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタント / PSマネジメントコンサルティング 代表
安藤 良治
私は、日本の大ファンである。
日本は、非常に豊かで素晴らしい文化を持っている。私は、ぜひ日本企業にかつてのように成功してほしいと願っている。
現在の日本企業が停滞しているのは、クオリティのせいではない。日本企業は、かつても今も、素晴らしいクオリティを持っている。
問題は、マーケティングが上手でないことだ。本書に書いたマーケティングについての知見をよく吟味し、理解したうえで実際に生かしてほしいと願って いる。
マーケティングのすゝめ。
今こそ、新たな21世紀のマーケティングを学んでほしい。そうすれば、日本企業も変わっていけるのではないだろうか。
私は、できると信じている。
これは、今月、中公新書ラクレから出版された「マーケティングのすゝめ」(21世紀のマーケティングとイノベーション)のエピローグで著者の一人である「近代マーケティングの父」と称されるフィリップ・コトラー教授が日本企業に向けたメッセージです。日本は、非常に豊かで素晴らしい文化を持っている。私は、ぜひ日本企業にかつてのように成功してほしいと願っている。
現在の日本企業が停滞しているのは、クオリティのせいではない。日本企業は、かつても今も、素晴らしいクオリティを持っている。
問題は、マーケティングが上手でないことだ。本書に書いたマーケティングについての知見をよく吟味し、理解したうえで実際に生かしてほしいと願って いる。
マーケティングのすゝめ。
今こそ、新たな21世紀のマーケティングを学んでほしい。そうすれば、日本企業も変わっていけるのではないだろうか。
私は、できると信じている。
ネスレ日本株式会社CEOの高岡氏との共著で、「本書は、21世紀のマーケティングについて、コトラー教授と一緒にネスレ日本の事例を中心にわかりやすく書いた実務書である。」と高岡氏がプロローグで紹介しています。
「日本企業は、マーケティングが下手!」と近代マーケティングの父から評価されたわけですが、IT業界に身を置いている人たちは、そもそもマーケティングへの関心も低い状況と言わざるをえないのではないでしょうか。マーケティングを自分の仕事として意識している人たちがその企業の中に何割いるでしょう?
「IoT時代、わが社も何とかアイデアを出して新しい事業を手掛けたい」と考えている経営幹部は多くいます。しかしながら、その幹部自身がマーケティングに関する素地も持たずに社員にアイデアを出せと言ってもビジネスにつながるアイデアが出ることなど期待できません。
ネスレ日本CEOの高岡氏は言います。
日本人は問題を発見することを不得手にしている。とくに、顧客が認識していない問題を発見することを苦手としている。
その原因は、日本人に物事を深く考える癖がついていないことだ。受験教育の弊害で物事を深く考えるトレーニングもしていない。これは、マーケターだ けでなくビジネスパーソンとして最悪のことである。
誰もが与えられたことは真面目に一生懸命やる。そのため、常に同質的な競争に陥って苦心している。その隘路に陥っている限り、競争から脱することは 不可能だ。
高岡氏は、「顧客の気付いていない問題を発見し、その問題を解決すること」がこれからのマーケティングだと言います。その原因は、日本人に物事を深く考える癖がついていないことだ。受験教育の弊害で物事を深く考えるトレーニングもしていない。これは、マーケターだ けでなくビジネスパーソンとして最悪のことである。
誰もが与えられたことは真面目に一生懸命やる。そのため、常に同質的な競争に陥って苦心している。その隘路に陥っている限り、競争から脱することは 不可能だ。
顧客の気付いている問題を解決することは、日本の得意とする『カイゼン』発想で実現できるけれども、顧客が気付いていない問題を発見し、解決するとなると『イノベーション』発想が必要だ。
ネスレ日本では、社員のイノベーション発想を伸ばすため「イノベーションアワード」という取り組みをしてるそうです。これは、1年に1度、すべての社員からイノベーションのアイデアを募集する仕組みで、大賞には100万円、次点に50万円、入賞で30万円の賞金を与えるものです。この取り組みによって、「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」を活用した様々なサービスが提案され、そのサービスが事業の発展に寄与しています。
経営トップが、コトラー教授と共著の本を出すほどマーケティングに熱心なのですから、全社員がマーケティングに関心を持つのもうなづけます。しかしながら、アワード導入の最初の年は、80件の応募しかなかったと言います。
2000人の社員に対して4%の応募しかなかったと、これはトップとしてはショックな数値だったことでしょう。年を追うごとに応募件数は増え、2年目は750件、3年目は1600件、そして5年目を迎えた最新の応募数は3360件、社員数を上回る応募があったとのことです。着実にイノベーション発想で顧客の気付いていない問題はないか、と考える社員が増えた証左といえるでしょう。結果として、ネスレグローバルの中でもネスレ日本の業績は非常に高い実績を出しています。
「マーケティングとは?」
本書を読んでいても何度もマーケティングの定義に出会います。
時代と共にその定義も変化しているとコトラー教授は言います。
20世紀、マーケティングは企業が成長するために満たすべきニーズ、つまり誰に何を売るかを決めるプロセスでした。
21世紀、マーケティングは顧客の問題を解決することで、顧客の価値を高めるプロセスへと進化しました。
マーケティングは顧客の持っている問題解決をするためのプロセスです。顧客の生活をより良いものにするための方法です。
解決策を作り、それを伝え、実行し、顧客に満足を与えることを目的とします。
マーケティングは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終ゴールなのです。
コトラー教授の言うとおり、「マーケティングは経営そのもの」という定義がもっともしっくりしているように思います。21世紀、マーケティングは顧客の問題を解決することで、顧客の価値を高めるプロセスへと進化しました。
マーケティングは顧客の持っている問題解決をするためのプロセスです。顧客の生活をより良いものにするための方法です。
解決策を作り、それを伝え、実行し、顧客に満足を与えることを目的とします。
マーケティングは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終ゴールなのです。
1950~1960年代は、製品管理中心の概念(マーケティング1.0)この時期は、如何にして自社の製品を販売するかが、マーケティングのテーマでした。
1970~1980年代は、顧客管理中心の概念(マーケティング2.0)この時期から、自社視点でなく顧客視点でマーケティングを考える、つまり消費者を満足させることに知恵を絞る、ことにテーマが移りました。
1990~2000年代にかけて、価値主導、より良い社会を実現するという崇高な目標を掲げて消費者の価値観に訴えるマーケティング3.0へと移行しました。ブランド管理中心の概念が生まれました。
コトラー教授は、21世紀のマーケティングであるマーケティング3.0の10の原則を次のとおりあげています。
(1)顧客を愛し、競争相手を敬う
(2)変化を敏感にとらえ、企業は積極的な変化を
(3)評判を守り、何者であるかを明確に
(4)製品からもっとも便益を得られる顧客を狙う
(5)手ごろなパッケージの製品を公正な価格で提供する
(6)自社製品をいつでも入手できるようにする
(7)顧客を獲得し、つなぎとめ、成長させる
(8)事業はすべてサービス業である
(9)QCD(品質・コスト・納期)の改善を
(10)情報を集め、知恵を絞って最終決定を
一つひとつの意味をきちんと理解して経営につなげる必要があります。
IoTの時代、新しいマーケティングで価値主導につなげることのできる一番近い位置にいるのもIT業界なのだと思います。
今こそ、全社員マーケティングで日本企業を元気にさせるけん引役となるIT業界に変貌させたいものです。
