人材育成コラム

“人財”育成のツボ

2009/10/27  (連載 第6回)

自ら学び、気付いたことは、身に付く!(4)

ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタント / PSマネジメントコンサルティング 代表

安藤 良治

 筆者が担当した、あるIT企業の新人研修の一日を前回に引き続きご紹介します。(前回の記事はこちら
 前回は、(2)PBL(Project-BasedLearning)型演習の前編、①インタビューフェーズと、②第1回プレゼンテーションを紹介しました。今回は後編を紹介します。

インタビューから開発まで、すべての工程を経験する「システム提案/開発演習」(後編)

(前回までの経緯)
 システム提案/開発演習は、研修のまとめとしてプロジェクトの全工程を 体験し、顧客満足を得るシステム作りを学ぶ演習です。 職場に配属されてから、しばらくの間はシステム全体、全工程を担当でき る経験は得られません。新入社員研修を通じて、この全体を経験する中で、 システムを作る目的、「顧客の目的」や「顧客の顧客」を考える習慣を身に 付けることがこの演習の目的になります。

 7つのチームに分かれ、各チームはバーチャルカンパニーを設立し、プロ ジェクトチームとします。メンバーの役割も明確にした上で、以下の流れで 進めました。
 ①インタビューフェーズ(前回記事を参照
 ②第1回プレゼンテーション(前回記事を参照
 ③設計/製造フェーズ
 ④トッププレゼンテーション
③設計/製造フェーズ

 各チームは、自分達の提案した内容に基づき、設計作業に入ります。最初に作業項目の洗い出しを行い、WBS(Work Breakdown Structure:作業分解図)を作成します。各チームのリーダーは、PL(プロジェクトリーダー)として、WBSの作成と進捗管理等を担います。

 この演習での開発作業には、ドキュメント作成基準を設けました。顧客企業のドキュメント基準から、最低限準備したい画面設計書やシステム設計書の作成を義務付けました。またJAVAでコーディングする際のコメント基準も提示し、職場配属後すぐに役立つ設計書の作成訓練も行いました。
 これだけの設計書を用意しなければならないと知って、学生時代プログラム開発経験のあるメンバーにとっても、現場の作業の大変さを実感したようです。
 各チームとも、開発完了までに500枚程度のドキュメントを作成して、成果物の一つとして提出しました。

 1ヵ月半の期間の中では、いくつかの問題も発生しました。
 モチベーションの問題も発生すれば、リーダーの負荷が高く悩むケースもありました。しかし、クラスマネージャーと講師の間の連携がうまくとれていたおかげで、問題を早期に発見し、解決につなげることができました。
 私のような委託された講師の立場では、解決できない問題も発生します。
 研修の成功には、クラスマネージャーとの連携が欠かせません。
 人材育成に熱心に取り組むご担当の方と良い連携が図れる環境で運営させていただけた私は、とても恵まれていたように感じています。

④トッププレゼンテーション

 トッププレゼンテーションには、顧客企業の社長そして幹部全員がご出席され、配属先の上長も出席されました。
 3分間スピーチで鍛えた新入社員のプレゼンテーションは、幹部も感心するほど堂々としており、また質問に対してもきちんと回答できていました。

 プレゼンテーションの最初に、各チームが作成したドキュメントを「私共の成果物です。」と言って、社長に提出し、その後皆さんに回覧していただきました。そのドキュメント類を見て、「これだけの物を良く作成した。」と評価いただけたことも新入社員の自信につながったようです。

 昨年から新入社員研修を担当させていただくようになりましたが、若い人たちの素直で前向きな姿勢に触れることで、私にとっても大きな刺激をもらっています。
 そして、クラスマネージャーの熱心さが、新入社員に大変良い影響を与えていました。

 世の中では、「今どきの若者」論がいろいろ言われます。それは、いつの時代も同じことだと思います。
 私が新入社員だった頃は、「カラオケ型」(伴奏ばかりで他と音程合わず。不景気な歌に素直。)と酷評されたものです。

 しかし、このような新入社員研修に携わる中で、「いつの時代も若い人は、何かを持っている!」と感じます。こうした気持ちのある若い人たちが、元気に社会で活躍されることを期待しつつ、今号の締めくくりとします。

(※この記事は2009年10月9日に「iSRF通信」で配信された記事を元にWeb掲載用に編集したものです)


この記事へのご意見・ご感想や、筆者へのメッセージをお寄せください(こちら ⇒ 送信フォーム