人材育成コラム

“人財”育成のツボ

2017/10/20 (連載 第101回)

「老青年」と「虹」

ITスキル研究フォーラム 人財育成コンサルタント / PSマネジメントコンサルティング 代表

安藤 良治

 高校生の頃の私は、何か分かったようなことを言う、へりくつの多い学生でした。
 一方で、「何か」を感じた時に感動もし、共感もして、そのことがその後の自分に影響を与える、感受性の強い学生でもあったように思います。

 そんな多感な時期、友人の父親から言われた言葉が強く印象に残っています。
 「君は『若年寄』と『老青年』、どちらの言葉が好きか?」
 「老青年ですか? 初めて聞きます」
 「僕はね、この老青年という言葉が、すごく好きなんだ。君たちからすれば、随分と年をとってしまったが、いつまでもこの青年の心というのを持ち続けたいね」

 「若年寄」という言葉は、「若くして年寄りじみた」イメージがするので好きな言葉ではありません。でも、友人の父親からすると、私は「若いのに分かったようなことを言う若年寄」に見えていたのかもしれません。
 「老青年」、「老」とつくので、その時は特に好きな言葉とはなりませんでしたが、友人の父の話し方、その時のとても生き生きとした目が印象的で、いろんな場面で「老青年」という言葉を思い出していました。

 同じ時期、担任の先生から教わった2つの詩が、「老青年」という言葉ととてもコラボレーションして、今も、いや今だからこそ、自分に語りかけています。
 2つの詩を紹介します。どちらも皆さんご承知の詩かと思います。
 一つは、サミエル・ウルマンの「青春」です。原文と訳文を掲載します。

YOUTH

Samuel Ullmann

Youth is not a time of life - it is a state of mind;
it is a temper of the will, a quality of imagination, a vigor of the emotions, a predominance of courage over timidity, of the appetite for adventure over love ease.

No body grows only by merely living a number of years;
peoples grow old only by deserting their ideals.
Years wrinkle the skin, but to give up enthusiasm wrinkles the soul.
Worry, doubt ,self-distrust, fear and despair-these are the long ,long years that bow the head and turn the growing spirit back to dust.

Whether seventy or sixteen, there is in every being's heart the love of wonder, the sweet amazement at the stars and the starlike things and thoughts, the undoubted challenge of events, the unfailing childlike appetite for what next, and the joy and the game of life.

you are yang as your faith, as old as doubt ;
as young as your self-confidence, as old as your fear;
as young as your hope, as old as your despair.

So long as your heart receives messages of beauty, cheer, courage, grandeur and power from the earth, from man and from the Infinite so long as your young.

When the wires are all down and all the central place of your heart is covered with the snows of pessimism and the ice of cynicism, then you are grown old indeed and may God have mercy on your soul.


青 春

サミエル・ウルマン

青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。
優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を却ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心,こう言う様相を青春と言うのだ。

年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて老いがくる。
歳月は皮膚のしわを増すが情熱を失う時に精神はしぼむ。
苦悶や、狐疑、不安、恐怖、失望、こう言うものこそ恰も長年月の如く人を老いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。

年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。
曰く「驚異えの愛慕心」空にひらめく星晨、
その輝きにも似たる事物や思想の対する欽迎、事に處する剛毅な挑戦、
小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。

人は信念と共に若く、人は自信と共に若く、希望ある限り若く

疑惑と共に老ゆる、恐怖と共に老ゆる、失望と共に老い朽ちる

大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、偉力と霊感を受ける限り人の若さは失われない。これらの霊感が絶え、悲歎の白雪が人の心の奥までも蔽いつくし、皮肉の厚氷がこれを固くとざすに至ればこの時にこそ人は全くに老いて神の憐れみを乞う他はなくなる。
 私の周りには、70歳を過ぎてなお、NPO法人や社団法人にて業界の発展のために尽力されている方を何人もお見受けします。この方たちを見るたびに、この詩を思い出します。

 そしてもう一つの詩、ワーズワースの「虹」も思い出され、自分に問いかけます。
「虹を見た時、今もまだあの頃と同じような『ときめき』を感じているか?」と。

My Heart Leaps Up

William Wordsworth

My heart leaps up when I behold
A rainbow in the sky.
So was it when my life began;
So is it now I am a man;
So be it when I grow old,
Or let me die!
The Child is father of the Man;
And I could wish my days to be
Bound each to each by natural piety.


ウィリアム・ワーズワース

空にかかった虹を見ると
私の心は高鳴るのだ
少年の頃もそうだった
大人となったいまもそうだ
年老いてもそうありたい
でなければ死をたまえ!
少年が長じて大人となる
だから私は少年の頃の
敬虔な気持を持ち続けたい
 随分若くして人生を達観している人もいます。組織の中で評論家的な存在で、いざという時に力を発揮できない人、残念な存在です。
 一方、定年を迎え、皆から惜しまれる人がいます。その人の目は次の人生を楽しみに生き生きとしています。
 ん? 年齢で線引きをすることで、日本の社会は随分と損をしているのではないでしょうか?


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