人材育成コラム

リレーコラム

2023/03/22 (第156回)

子どものSNS利用時のトラブル増加中

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社アイテック 顧問

福嶋 義弘

 2月18日(土)に横浜市港南区青少年指導員協議会の研修会で「ITとデジタル社会の動向解説」というテーマで講師を務めた。自身も25年間青少年指導員として活動してきた。青少年指導員は、青少年の自主活動とその育成活動を推進することにより、地域ぐるみの青少年健全育成を図るため、自治会・町内会などからの推薦に基づいて、神奈川県知事、横浜市市長が委嘱している。任期は2年である。現在は第28期、55年続く事業である。主に青少年の健全育成を目的にウォーキング、スポーツ、祭り、フォーラムなどのイベントや自治会開催の各種事業の企画、運営に携わっている。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、イベント開催は中止、大人数の集いや密を避けるためミーティングは禁止になり、活動は激変した。オンライン会議の導入、事業運営のデジタル化が進むことになった。アナログの活動が中心の団体で「IT、デジタル化、IoTとは何?」、「SNS利用の注意点は?」 などの各種疑問が多く寄せられた。そこで研修会の実施となった。制限解除が進むなか、集合形式で実施した。もちろんZoomでの参加も可能。内容は、簡単なコンピュータ基礎から始まり、IT動向、DX動向、情報セキュリテイの脅威などを説明した。まさに、青少年指導員のリスキリングである。

 研修会実施の目的はもう一点あった。生まれたときからインターネットが身近にある今の子どもたち。政府のGIGAスクール構想の影響もあり、小学生から自分自身のスマートフォンを持ったり、授業でパソコンを使ったり、インターネットを利用する機会が増えている。一方で、ネット依存やネットいじめ、SNSを通じた性犯罪被害など、子どものインターネット利用をめぐる様々な問題が発生している。地域の小学校や中学校との情報交流でも取り上げられる話題である。その実態の把握も今回の研修目的になった。

 2020年(令和2年)にSNSに起因する事犯の被害を受けた18歳未満の子どもは1,819人にのぼることが2021年3月12日、警察庁の調査結果より明らかになった。被害者は中高生が9割近くにのぼり、利用したSNSは「Twitter」が全体の35.3%を占めたようである。SNSの特徴は、多くの人と気軽にコミュニケーションを取れることであるが、未熟な子どもたちは、気軽に人とつながってしまうことからトラブルに発展することも多くなっている。

 今回の研修で紹介された例では、「友達だけに限定公開したSNSの画像や書き込んだ投稿が思わぬところから流失し、引用・拡散されてしまい誹謗中傷・人権侵害になった」、「みんなと共有したい目的で、他人が描いた、漫画、音楽、画像、映画、テレビ番組を無断でアップロードやダウンロードをすると、著作権侵害に問われる」、「友達同士でコミュニケーションを取るときに、言葉足らずで違う意味に捉えられてしまったことが原因でいじめの対象に発展した」が紹介された。

 それ以外でも、SNSで大金を稼げるなどの話から、犯罪に巻き込まれるケースやSNSで出会った見ず知らずの人と、連絡を取り合っているうちに実際に会うことになって、そのまま連れ去られたり犯罪に巻き込まれたりするケースも増加している。

 SNSの普及により、様々な情報が簡単に手に入るようになった。しかし、人生経験や社会経験に乏しく、判断力も乏しい子どもたちは、ネット犯罪に巻き込まれることが増えてきているのが現状である。自分の子どもは大丈夫と思うかもしれないが、誰でも気軽に利用できるSNSは誰でもトラブルに遭う可能性がある。子どもがトラブルに遭わないよう注意するには、フィルタリングの活用、年齢に あったスマートフォンの設定をしたり家族間で利用のルールを設けたり、どのように利用しているか普段からコミュニケーションを取ることが大切なようである。

 従来の青少年の健全育成事業の見直し、改善の必要性を考えさせられる一日となった。





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