人材育成コラム

リレーコラム

2018/9/20 (第100回)

先人たちのキャリア自律

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社日立インフォメーションアカデミー 取締役社長&学院長

石川 拓夫

 先日、ある会合に出席した。この会は参加者が若き日に、企業の中で「新しいことをやろう」「面白いことをやろう」「俺たちが会社を背負って立つ」という思いでつながって立ち上げた会で、60歳前後を迎えたところで「還暦○○会」と枕をつけて復活したものだ。今でも各方面で活躍中の元気なおじさん連中である。私は系譜にはいなかったが、ひょんな縁から仲間に加わり、飲み会に参加している。

 一番後輩の私が評するのは不遜だが、あえてこの人たちに共通していることを挙げると次の通りである。

(1)キャリア自律している(自律した思考で仕事をやってきている)
(2)人に認められ、相応の地位を築いている(自分の居場所を見つけている)
(3)それぞれの持ち味を生かしたキャリアを歩んでいる(キャリアアンカーの理論を実践している)
(4)話に物語があり面白い(自分で考えて実践してきているので、リアルで興味深い)

 少なくとも、言われたことだけをやってきた人たちとは異なるオーラがある。同じように組織の中でもがいてきていても、考え方とそれに基づく実践が少し異なるだけで、40年近くたつとかなり異なる状況になることがよく分かる。

 人生100年時代、加えて激変する今の日本で、自分らしいキャリアを歩むためには、まずは「キャリア自律」の意識醸成が必要だと思う。「一人称で考え実践する」「自分のキャリアは自分で築く」「自分の生き方を白紙委任しない」である。でも、いまだにそんなことを指摘しなくてはならないところが日本の課題なのではないだろうか。現在のシニア・ミドルの雇用問題を見るたびにそう思う。

 でも、よく見渡すと、とってつけた理論で、外野からいまさら指摘されるまでもなく、「だって言われたことだけやっていたのでは面白くないじゃん!」と会社を引っ掻きまわしてきた(いや失礼!、会社との距離感をうまく保ちつつ、やりたいことを実現してきた)人たちは昔からいたのである。「時代が違う」と言わずに、こんな先人たちから学ぶことは大変貴重だと思っている。キャリア自律を無意識に実践してきた人たちである。決して平たんな道ではなかったと思うが、結果としてどうだったかは、それぞれが体現されていて感じるものがある。

 みなさんにも参考になるのではないかと思う。


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