人材育成コラム

リレーコラム

2019/03/20 (第106回)

IT業界泣かせの今年の特需。行方は!

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社アイテック 顧問

福嶋 義弘

 平成最後の年になり3カ月が過ぎ、いよいよ4月30日で「平成」は幕を閉じ、5月1日から新元号へと変わる。新元号は4月1日に発表される。約30年間続いた「平成」が終わり、新しい年号に変わる日となり、現在の天皇陛下が退位し、新しい天皇陛下が誕生する。皇位継承が行われ、時代が大きく動くことになるわけだ。

 IT業界は、改元に伴ってシステム改修の特需になる。経済産業省は2月7日、今年5月に行われる改元を前に、改元に伴って必要となる企業の情報システムの改修の段取りや工程、注意点などについて解説する説明会を全国で行った。平成への改元の時には、かなりの混乱をきたした反省からのことであろう。

 しかし、企業側は平成の改元作業で改元を見越して対策を行っている。平成の時より混乱は少ないと予測されているが、新元号の公表から改元までの期間はおよそ1カ月しかなく、改修システムに関わるSEやプログラマーは大変である。特に金融機関や公的機関のシステムを改修するのはシビアだと思われる。改修が間に合わなかった部分については特別な措置を取る必要が生まれる可能性があるかもしれない。

 システム改修について政府から要請されたポイントは次の通りである。公表の抜粋を示すと

●情報システム改修に向けて想定される段取り・工程

《新元号公表前に行う作業》
(1)和暦の使用状況の調査とシステム改修計画の策定
(2)他のシステムとの連携における連携先の対応方針の確認
(3)プログラムの修正と動作テスト
(4)修正したプログラムの適用などのリリース作業のリハーサル

《新元号公表後に行う作業》
(1)新元号の適用(仮元号から新元号に置き換える作業のみならず、OS 等のアップデート含む)
(2)印字や表示を含め、処理が適正に行われているかどうかのテスト
(3)他システムとの連携のテスト(動作確認、エラー修正、再確 認等)

 最近では、平成の30年を振り返る特集が多くなっている。自身なりに脳裏に残る出来事を幾つか思い出す。まずは平成13年(2001年9月11日)の米国多発テロ、ツインタワーが崩壊する映像は衝撃的であった。その後、米国はアフガニスタン紛争、イラク戦争へと進んでいく。この事件を知ったのは帰宅のタクシーの中、乗車するなり興奮気味にニュースを伝えるドライバーの話が信じられず「うそでしょ」と思わず発言。帰宅後、旅客機の突入とビルの崩壊する映像でことの重大さを認識した。国内では平成7年(1995年)オーム真理教の地下鉄サリン事件が発生している。通勤時に発生した国内でのテロ事件。昨年、オーム真理教教祖の松本智津夫元死刑囚を含む幹部の死刑が執行された。改元の前に幕引きを図ったのではないかと話題になった。経済面では平成3年(1991年)のバブル経済の崩壊や平成20年(2008年)リーマン・ショックであろう、企業人として少なからず影響を受けた。

 平成は自然災害も多く発生している。平成6年(1994年)阪神・淡路大震災、平成23年(2011年3月11日)東日本大震災、多くの貴重な人命が犠牲になった災害である。名神高速道路の崩壊や津波の生々しい映像は脳裏に焼き付いている。3月11日は帰宅困難となり、PCのニュース、TVとラジオで情報収集しながら緊急地震速報の音と余震におびえ、会社で一夜を過ごした。記憶に残る出来事は事件や災害などで、良い出来事は残らないようである。

 今年10月に実施が予定される、IT業界にとってのもう1件の特需、消費税増税である。消費税は平成元年(1989年)に3%導入で開始された。そして、2回の増税を経て新元号の今年10%増税が予定されている。消費税増税に関しては過去に2回のシステム改修を経験している。過去の学びもあり、大きな混乱は起きないと考えられる。しかし、今回は一部の対象品目に8%の税率が適用される軽減税率制度が導入されるため、従来の消費税増税とは異なり、企業にとって非常に大きな負荷がかかることが予想される。直前に混乱をきたさないためには、「制度理解」「業務への影響」「システムへの改修対応」の視点で消費税増税に向けた準備を実施しなければならない。

 消費税10%が施行されると、標準税率10%(消費税7.8% 地方消費税2.2%)と軽減税率8%(消費税6.24% 地方消費税1.76%)の複数税率を管理するために、税率ごとに区分した記帳「区分経理」が必要となる。軽減税率は食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)の譲渡と、週2回以上発行される定期購読の新聞が該当する。特に食品については外食やケータリングは軽減税率対象とならず、同じ品目でも軽減税率と標準税率が混在するケースが存在することになる。品目により複雑な判断が必要となり、ミスなく正確な経理処理を行うために対象品目を正しく理解しておく必要がある。会計・販売管理のシステムを中心に基幹業務に関わるあらゆるシステムに影響する。

 景気に足踏み感があるなか、増税は好ましくはないが施行されるのであれば、混乱しないよう万全の準備・改修・動作確認を実施してほしい。


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