人材育成コラム
リレーコラム
2019/04/22 (第107回)
「サブスクリプションビジネス」
ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG主査
株式会社NTTPCコミュニケーションズ 営業本部 営業企画部長
中山 幹公
当カンファレンスの講演会場では、今回は4つのセッションを行ったのだが、実はこの「サブスクリプション」にもっとも多くの時間を割いた。私の出番となるクロストークの前に、兵庫県立大学教授でビジネスモデル研究、特にこのサブスクリプションについての権威である川上先生に講演をしていただいたのだが、川上先生と弊社幹部との対談記事も公開されているので、その内容なども参照しながら、「サブスクリプションビジネス」について今回は考えていきたい。
■東洋経済 ONLINE
「サブスクリプション」で成功する秘訣とは?
https://toyokeizai.net/articles/-/260827
最近よく耳にする「サブスクリプションビジネス」だが、みなさんどういうように理解されているだろうか。よくある誤解が「サブスクリプション=定額制」というものだ。確かに定額制のサブスクリプションサービスは多いのだが、従量制課金のものもあるし、そもそも「サブスクリプション」はビジネスモデル全体を表す言葉であり、課金形態はあくまでその一部にすぎない。
ポイントは、お客さまに「申し込み」を頂きサービスを提供し続けることでお客さまとの「つながり」が長く続くということ。つまり、商品やサービスを提案して成約いただいて終わりということではなく、むしろそこからがスタートということだ。サービスを提供し続ける中でいかに満足いただくか、そのためにはお客さまとのつながりの中から課題を見いだし、サービスを常にアップデートしてよりいいものにする努力を継続的に行う必要がある。
その際に、サブスクリプションの提供企業側の利点として、ユーザの利用状況についてのデータを随時取得できるという点もある。スマホアプリのゲームなどをイメージいただければわかりやすいかもしれないが、ゲーム利用者の利用状況のビッ グデータを解析し、次にどういう機能やオプションを追加すればユーザが満足してゲームを使い続けるか、その分析と絶え間ないサービスのアップデートが提供企業側における肝となる。
近年は、Salesforceに代表されるSaaSサービスの拡大に伴い、IT業界における様々な物販やシステム販売などのワンショットビジネスをサブスクリプションに転換しようとする動きが活発化している。一方で、従来のワンショットビジネスをサブスクリプション型に転換しようとすると、従来よりも少額でかつ多くの契約をずっと管理していかねばならず、月額課金に伴い毎月の請求書の発行処理や、利用ユーザからの各種問い合わせへの対応など、これまでノウハウのない様々な業務が発生することとなる。
私ども通信キャリアのビジネスは、もともとサブスクリプション型であり、前述した様々な業務のノウハウを持っており、それを支える各種システムも保有し、継続的に改善してきた。
サブスクリプションビジネスを始めたいという事業者の方には、まずは第一歩として、回線サービスの再販事業をお勧めしたい。NTT東日本、西日本が2015年から始めた「光コラボレーションモデル」により、様々な業種の事業者が回線サービスを手がけるようになったが、一方で回線の管理などが煩雑となり、膨大なエクセルシートを、人手をかけて管理していてもう限界だという声も聞かれるようになった。
NTTPCはそうした事業者の業務支援のためのプラットフォームサービスを2016年に開始した。これを利用することで、事務処理作業が従来の約50%削減できたというようなお客さまも複数いらっしゃる。
そこで、このプラットフォームサービスをより拡充し、回線だけでなく、様々なものの「サブスク化」をご支援するビジネスへと発展させることとなった。
■NTTPCコミュニケーションズ
サブスクリプションビジネスに転換するための仕組みを提供|NTTPCのBPaaS
https://www.nttpc.co.jp/lp/bpaas/
今後、このサブスクリプションの流れはますます加速していくと思われる。ITスキルの面から考えてみても、従来のIT業界は顧客の要件定義~設計・構築~納品といった部分にウエイトが置かれており、この部分のスキル開発や体系化は進んでいるが、サブスクリプションモデルを前提とした利用開始後の継続的なサービス提供、サービス改善のためのデータ分析、サービスのアップデート、それらを通じたカスタマサクセスといったフェーズに今後はもっと着目してスキル開発や体系化を進める必要があるだろう。
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