人材育成コラム

リレーコラム

2020/05/20 (第120回)

試練の時

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社日立アカデミー 取締役

石川 拓夫

 今年もバラの季節になった。わが家の庭も例年同様、間もなくつるバラが満開を迎える。庭に出ると芳醇なバラの香りが楽しめる。今だけの贅沢だ。でも今年は素直に喜べない。自然は変わらず巡ってくるのに、社会の様子は様変わりしているからだ。

 緊急事態宣言が5月末まで延長になった。原則在宅勤務の生活がもうしばらく続く。60歳を過ぎ、キャリアの仕上げの時期を迎えたが、今まで経験したことがない社会人生活を過ごすとは、なんとももどかしい。同じように長い自粛や在宅勤務の生活に戸惑っている人も多いことだろう。

 私ごとで恐縮だが、わが家は社会の縮図と化している。4月から私は在宅勤務、長男は新社会人だが、入寮先に荷物を送ったきり自宅待機。次男、三男は新大学生だが、次男は大阪で、三男はわが家で自宅待機。高校生の四男も自宅学習と、次男をのぞいた家族と濃厚な生活を送っている。こんなに一緒にいるのは初めてだろう。さして広くないわが家で、息を潜めて自粛しているのは、子らにとってはかわいそうだが、よく我慢していると思う。
 連休明けから少しずつ遠隔授業が始まることが救いだが、子らの教育の遅れは心配である。これは企業も同じだろう。

 新型コロナウイルスによる社会の混乱は、人々に様々な試練を与えている。実家が商家だったのでよく分かるが、例えば人のつながりを大切に商売をされている方は、工夫をしながらも自粛の影響は大きい。行政の支援もあるが、全額は補填されないなど問題も多く、救いの一手にならないとも聞く。一刻も早い事態の沈静化を祈っておられることだろう。

 当社のような人財育成サービス業の会社も同様に自粛の影響は大きい。もともとeL化は推進してきたが、集合研修を自粛するなかで、オンライン研修に切り替えられるものは行なっているが、まだ経験が浅くて課題も多く、そう簡単にはいかない。特にグループワークや演習など高度な取り組みとなるとノウハウの蓄積や試行錯誤の期間が必要だ。そんななかでも新型コロナウイルスの感染収束後に訪れるであろう新しい常識の世界をにらみ、やれることを急いで、挑戦したいと取り組んでいる。

 「神は乗り越えられる試練しか与えない」。これは連休中に観た再放送のドラマのフレーズである。タイムスリップした主人公が、降りかかってくる様々な試練に対して、迷い悩みながらも、医者の本分に立ち返って立ち向かう姿に、あらためて素直に感動した。新型コロナウイルスで混乱する社会のなかで、ドラマの主人公に少しだけ自分たちの姿を重ねて、とても胸に響いた。個人的にもそう思ってやれることをやりたいし、そうであってほしいと強く願っている。


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