人材育成コラム

リレーコラム

2020/06/22 (第121回)

コロナ禍により活用拡大したオンライン教育

ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社アイテック 顧問

福嶋 義弘

 5月末、新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が全面解除された。これにより徐々に日常が戻り、経済回復が進むと推測されるが、流行前のような生活に戻ることはないと考えられる。ウイルスのまん延は、われわれがこれまで経験したことがない生き方に強制的にパラダイムシフトさせた。ニューノーマルといわれるように、当たり前だった世界はもうないのだ。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、集合型のセミナーや研修が中止を余儀なくされ、それらをオンラインで実施する動きが急速に進んだ企業も多いと思う。特にこの時期影響を受けたのが新入社員教育である。その場合、従来のプログラムをそのままオンライン化しようとしてもうまくいかない。ネットワーク環境、実施時間やコンテンツ内容、ファシリテーションの仕方など、講座の特性に合わせて仕立て直す必要がある。

 先日、ITサービス業を中心とする人材育成担当の情報交換会、ITベンダーの主催する全国の中小/中堅のITサービス業の人財分科会で新入社員教育のオンライン研修に関するアンケートを実施した。その結果を踏まえ新入社員教育の状況をコラムにする。

 学習形態/環境の調査結果では、ほとんどが在宅学習、予定していた研修内容をリモート実施する社が多く。その他、Eラーニングや通信教育や書籍教材による自主学習などもあった。
 PC、スマホ、iPadなどの機材を貸与する社が8割。通信環境は半分以上の会社が個人の通信環境に任せている。企業によっては、通信費を補助する会社、ルーターを配布やスマホからのテザリングなどまちまちである。
 今年は緊急事態のため混乱があったが、新人や社員に負担がかかることは避けなければならない、今後どうなるか分からないが、各社のガイドラインをしっかりと作成する必要がある。それは、働き方改革でのテレワーク推進でも同じことがいえる。

 オンライン研修のツールは、ZOOM、teams、Skype、WebEXなどがあり、オンライン会議ツールや自社独自の会議システムを含めると多くのツールが存在する。オンライン研修を実施した企業で利用したツールを聞くと、ZOOM、teams、Skypeで6割を占めていた。私自身もITベンダーの新入社員研修でZOOMを使った教育を経験した。ZOOMについては、セキュリティー面での脆弱性を指摘されたが、ツールとしての完成度が高いため研修ツールとして特化するのであれば適していると判断できた。また、用途に合わせツールを併用する場合もあるようである。例えば研修はZOOMで行い、社外秘情報を扱う場合はSkypeを使用する会社もあった。

 オンライン研修であるが、全体講義に関しては、資料の共有やチャット機能を活用することで質疑応答にも対応でき、知識面でのスキル醸成は進められる。一番危惧されたのが「メンバー間でのコミュニケーションがはかれるか」「チーム演習で期待できる結果が得られるか」であった。確かにリアルな場でないために、受講者同士の密なコミュニケーションは効果が低いと感じたが、ZOOMのブレークアウトセッションなど、別室をつくることによりチーム演習で成果をだすことができた。満点とはいかないが、この短期での形態変更と準備としては、十分満足できる成果ではないかとの評価が多数であった。

 在宅での研修は、個人が集中できる一方、受講者の不安の払しょく、進捗や理解度の確認などのフォローが必要と感じた。今回は研修講師以外にクラスマネージャを配置し研修以外の受講者フォローを実施した。その他注意事項として「在宅では、新入社員研修の会社への帰属意識が芽生えづらい」や「個人学習での心理的不安解消のため、メンターの配置なども効果がある」との意見もあった。なかなか進まなかったオンライン教育、新型コロナウイルス対策の影響で拡大することとなった。企業の危機対策として環境、コンテンツの拡充が推進されると思う。

 政府は日本のIT競争力の向上を目指し「2025年の崖」「インダストリー4.0」などと危機をあおり、DXを推進してきた。しかし、コロナ禍で露呈したのは日本のIT競争力の低さである。スイスの国際経営開発研究所(IMD)によると、2019年の日本のデジタル競争力は対象63カ国中23位であり、アジアでは中国、韓国や台湾に後れを取っている。コロナ対策においても給付金のネット申請障害の頻発や接触確認アプリの開発遅れ、教育現場のデジタル化遅れなど顕著である。世界ではコロナ禍を好機と捉え、最新のデジタル技術やデジタル活用し変革する動きが始まっている。日本もコロナ禍を好機と捉え、世界とのIT競争力の差を縮めるためのビジネスイノベーションが必要である。


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