人材育成コラム
リレーコラム
2021/11/22 (第140回)
先の見えない時代に、どう生きるべきか立ち返るための教科書!
ITスキル研究フォーラム 理事
株式会社アイテック 顧問
福嶋 義弘
なぜ渋沢栄一は、論語を選んだのか。本書で、孔子は「偉大な常識人」であると言っている。特別な長所も短所も無く、人より抜きんでた能力や強い個性を持った天才・奇人でもないのが孔子である。論語は、平凡な人でも手が届く、個人の身を修めるといった日常的な実践指導も可能、そして何より時代が変わっても変化しない人間と人間社会の本質を描いていることに着目したようである。一方、算盤は金儲けする経済(商売の道)を表している。人道と商売の融合が日本資本主義の発展に重要と実践し、現在の礎を築いたのだろう。
「論語と算盤」は、現代語訳が出版されており、読みやすく内容も維新から大正にかけて起こった出来事や偉人と渋沢栄一の関りが描かれた自叙伝で、さらっと読むことができた。そのなかに論語を基にした人生訓が描かれていた。記憶に残ったいくつかを紹介する。
- 人は、誠実にひたすら努力し、自分の運命を開いていくのがよい。もしそれで失敗したら、「自分の智力が及ばなかったため」とあきらめることだ。逆に成功したなら「知恵がうまく活かせた」と思えばよい
- 政治の世界で、今日、物事が滞ってしまっているのは、決めごとが多すぎるからである。もともと形式に流れるような風潮は、発展中の元気溌剌な国には少ないものだ。逆に、長い間の習慣が染みついた古い国に多くなる
- 何かをするときに極端に走らず、頑固でもなく、善悪を見分け、プラス面とマイナス面に敏感で、言葉や行動がすべて中庸にかなうものこそ、常識なのだ。欧米諸国の、日々進歩する新しいものを研究するのも必要であるが、東洋古来の古いもののなかにも、捨てがたいものがあることを忘れてはならない
- 一個人の利益になる仕事よりも、多くの人や社会全体の利益になる仕事をすべきだ
- 人が世の中を渡っていくためには、成り行きを広く眺めつつ、気長にチャンスがくるのを待つということも、決して忘れてはならない心がけである
- 信用こそすべてのもと、わずか一つの信用も、その力はすべてに匹敵する
参考書籍:現代語訳 論語と算盤
渋沢栄一(著)/守屋 淳(訳)/筑摩書房/256ページ
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