人材育成コラム
リレーコラム
2022/05/20 (第146回)
STEAM教育
株式会社教育エンジニアリング研究所 代表取締役
一般社団法人IT人材育成協会 理事
木村 利明
アメリカで提唱されたのは2008年ですが、我が国でも「プログラミング教育」の導入・普及に伴って脚光を浴びるようになりました。
「教育業界へのビジネス拡大を実現します」というスローガンのもと、今年は『STEAM教育 EXPO』が東京・大阪で開催されます。
STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習する「STEM教育」に、さらにArts(リベラル・アーツ)を統合する教育手法である。
STEAM の順番を入れ替えたTEAMSという表現も提案されている。
STEAM教育では、生徒児童の数学的、科学的な基礎を育成しながら、彼らが批判的に考え(批判的思考)、技術や工学を応用して、想像的・創造的なアプローチで、現実社会に存在する問題に取り組むように指導する。またSTEAM教育の具体的な手法としては、デザインの原則を活用したり、創造的な問題解決を奨励することなどが挙げられる。
STEMは収束思考に陥りがちだが、それにArts(人文科学や芸術を含めたリベラル・アーツ)を加えると拡散思考が加わり創造的な発想が生まれることを強調している。
上記はWikipediaからの抜粋です。これで概要はお分かりかと思います。STEAM の順番を入れ替えたTEAMSという表現も提案されている。
STEAM教育では、生徒児童の数学的、科学的な基礎を育成しながら、彼らが批判的に考え(批判的思考)、技術や工学を応用して、想像的・創造的なアプローチで、現実社会に存在する問題に取り組むように指導する。またSTEAM教育の具体的な手法としては、デザインの原則を活用したり、創造的な問題解決を奨励することなどが挙げられる。
STEMは収束思考に陥りがちだが、それにArts(人文科学や芸術を含めたリベラル・アーツ)を加えると拡散思考が加わり創造的な発想が生まれることを強調している。
IT人材育成という視点からも重要な理念ではないでしょうか?
実は、以下の文のように文科省もSTEAM教育を推奨・推進しています。
AIやIoTなどの急速な技術の進展により社会が激しく変化し、多様な課題が生じている今日、文系・理系といった枠にとらわれず、各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成が求められています。
文部科学省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でA(Arts)を定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進しています。
文科省は「総合学習(総合的な学習)」の発展形として位置づけているようです。文部科学省では、STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)に加え、芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等を含めた広い範囲でA(Arts)を定義し、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習を推進しています。
いずれにせよ、キーワードは次の3つですね。
(1)「理系文系にとらわれず」、(2)「教科等(分野)横断的に」、(3)「実社会での問題発見・解決に生かす」。
2013年に米・オバマ大統領が演説の中でSTEAM教育の重要性を訴え、それをきっかけにして全世界に拡がりました。
日本もようやく遅ればせながら…というところですね。
ただ、理念は正しいとしても、その実現は難しそうです。
実際に、「方法論」がない、「教育プログラム」がない、そして、なによりも「教える先生」がいない、という声が圧倒的です。
総合的に教える、というのが難しいのです。
あらゆるところで「分業化」「専門化」が進み過ぎて、教育の世界も「それしか教えられない」先生ばかりになっていますね。
IT企業の「新人研修」でも、多くの場合「ネットワーク」「データベース」「アルゴリズム」「Java」などの科目をそれぞれ別々の講師が教えています。
その人たちではとても「教科等(分野)横断的に」は教えられませんし、そうした「教育プログラム」もほとんど存在していません。
ましてSTEAM(「科学」「技術」「工学」「数学」+「リベラル・アーツ」)です。
現状の延長線上で考えている限り、とても実現できそうにありません。
「リベラル・アーツ」は古代ギリシャ・ローマ時代に遡ります。
一人前の人間に必要な“教養学課”の意味で、時代によって多少変わりますが、「文法学」「修辞学」「論理学」「算術」「幾何学」「天文学」「音楽」の7学科を言います。
当時はその7学科を一人の教師が「総合的に」教えていました。そうすれば、生徒も関連づけて深く学べるからです。
当然ですがこのやり方では教師の質がより問われることになります。だからこそ、それができる人だけが(敬意を込めて)『先生』と呼ばれたのです。
前身のSTEM(2003年)から、その目的は「科学技術開発の競争力向上」です。
日本も2000年に「e-JAPAN重点計画」が打ち出され、「IT技術立国」を目指したはずですね。…その結果はどうでしょう?
残念ながら、このコロナ禍で日本のその分野での脆弱さが浮き彫りになってしまいました。それ以前からずっとIT技術者の「人材不足(質&量)」は深刻な問題だったのです。
これでまたSTEAM教育で諸外国から遅れを取るようであれば、「失われた30年」がそのまま「40年」になるだけでしょうね。
はたしてSTEAM教育を実現する方策はあるのでしょうか?
…実は、「ある」のです。
ただし、DX(デジタルトランスフォーメーション)ならぬEX(エデュケーショントランスフォーメーション)で、人材育成の考え方を「一変させる」必要があります。
次回は、その実現方法について述べてみたいと思います。もちろん、このコラム連載が続けば…の話ですけれども(笑)。
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