人材育成コラム

リレーコラム

2023/02/20 (第155回)

コロナ禍明けのワールドカフェ

ITスキル研究フォーラム 理事
日立建機株式会社 人財本部 人財開発統括部 主席主管

石川 拓夫

 先日、久々にワールドカフェのファシリテーターを務めた。テーマは「第二の創業にふさわしい次期中計をみんなで一緒に考えよう!」。生涯二度目のファシリテーターだったことと、テーマがテーマだけに解像度をどの程度上げていくか、難易度の高いワールドカフェだったが、なんとかやりきれたと安堵している。
 日立建機は、昨年親会社の資本政策により、日立グループから離脱した。ちょうど今年度が現中計最終年度で、次期中計を策定する時期と重なった。加えて世の中はDXの時代で、先を見据えた挑戦的な取り組みが、保守的な建設機械メーカーといえども求められている。こんな事情から、第二の創業を合言葉に、各部門で次期中計策定が進んでいる。我々人財部門も、第二の創業にふさわしい人財施策の策定が必要であった。

 そんな中で当社のCHROから、次期中計は人財部門全体で考えてほしいとの強い意向が出た。トップダウンではなく、ボトムアップも交えた政策作りだ。最前線で現場と向かい合っている人財部門のメンバーこそ、第二の創業で起きている事実や変化を察知しているはず。これを次期中計に反映したい。そんな思いからのリクエストだった。
 外部のコンサルタントに依頼して、なにかしらのメソッドに従って、ファシリテーションをお願いすることも考えたが、費用と時間の問題もある。CHROの想いを人財部門全体で共有し、みんなで考えを吐き出してみる……そんなセッションでよければと、ワールドカフェをやってみることにした。

 CHROの想いは、ここで詳しくは紹介できないが、めざす姿の一番大きな変化として掲げられたのは「会社と個人は対等の関係(“タテ”から“ヨコ”への構造転換)」だ。
これは具体的には、

①個々人のキャリア形成・成長を会社が支援し、会社の成長につなげる(皆がヨコでつながる)

②会社は家、従業員は家族。個(ヒト)を大事にする(従業員第一主義)

③“マス(組織)の管理”から“個(ヒト)の夢・志の実現支援”へ(適財適所、人財育成)

ということであり、それまでどちらかというと上意下達の仕事のやり方をベースとした人財施策からは、世界観を大きく転換する目標だ。まさにキャリア自律を中心に置いた人財マネージメントの実践であり、関係する人財施策の諸制度をゼロベースで見直す必要がある。このような難題に一プロセスとはいえ、ワールドカフェをどう位置付けて、貢献するかが課題だった。

 しかしこの心配は実施後杞憂だったことに安堵した。やはり前線で変化を感じているメンバーにとっては、CHROの想いは自分の想いでもあったようだ。ワールドカフェの有効性をいかんなく発揮し、明るく和やかな雰囲気の中でも、真剣な議論ができ、最後のハーベストプロラムで、具体的な施策の提言がいくつも挙がった。

 施策の具体化は、この成果を引き継ぎ、各部門で進行中である。ワールドカフェは、みんなの潜在意識を耕しただけかもしれないが、多くの人のアイデアやヒントが、メンバーの頭の中で統合され、それが具体化される切っ掛けになったのであれば、それでよかったと思う。
 なによりもリアルに、部門のメンバーが集まり、みんなで議論できたことは、大きな収穫だったと思う。コロナ禍の3年間は難しかった取り組みで、メンバーはこんな企画に飢えていたのかもしれない。堰を切ったような意見交換は印象的だった。どの企業も、コロナ禍明けのイベントが必要かもしれないと思った。

 最後に、コロナ禍の最中に異動して約2年、小生とリアルに話をしたことがないメンバーが多かった事実が、ワールドカフェの冒頭で明らかになったが、人財部門の参加者や事務局のみんなの協力で無事目的を達成できたことに素直に感謝したい。加えてファシリテーションの素人である小生に、いろいろとアドバイスをしてくれたかつての同僚たち(日立アカデミーの同僚)にも感謝したい。
 第二の創業にふさわしい人財施策が立案され、実施され、その提供価値が企業価値向上につながることを期待している。




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