人材育成コラム
リレーコラム
2024/3/21 (第168回)
デジタル人材育成はマインド、リテラシー、スキルのどれから始めるべきか?
ITスキル研究フォーラム DX意識と行動調査 ワーキンググループ 副主査
株式会社ディジタルグロースアカデミア 代表取締役社長
高橋 範光
「デジタル人材育成」で調べると、どうやら「ITパスポート試験」という資格取得を推奨している企業が多い。ITパスポート試験は体系的なデジタルに関する知識を問うものであり、資格取得を一つの目標としていわゆるデジタルリテラシーの習得に取り組むことは分かりやすい。そこで、まずしっかりと知識を習得する「デジタルリテラシー」から始める企画を整理し社内で説明したところ、「知識をどれだけ習得したとしても、実際に使えないと生産性は上がらない。生産性に直結する社内のデジタルツールを活用できるようにしたほうがいい」という声が上がった。
なるほど、デジタルスキルの獲得から始めたほうが生産性にはつながりやすい。社員にとっても、実践スキルのほうが成長感を味わえる。調べてみると、全社員IT人材化というキーワードも見つかり、ノーコードツールを使った人材育成を行っている企業もあるようだ。成果を実感できれば、他のツールや知識の習得に向かう人も増えるだろう。そこで、「社内のデジタルツールをみんなで使えるようになるデジタルスキル育成」を企画してみた。すると今度はベテラン社員から、「そういうのを使うのが得意な若手社員がしっかりやってくれるのなら、自分は勉強しなくてもよさそうだ。苦手なことを無理にやるもんじゃない。習得できるかどうか分からないスキルの勉強の時間がもったいない。」という声が上がった。
たしかに若手社員や慣れた人は社内ツールを難なく使いこなす。そういう人たちを中心に人材育成をやればすぐに成果につながるだろう。そこでデジタルが得意な若手社員に聞いてみると、「自分は慣れているからいいですし、できない人の業務を手伝うのもいいんですが、毎回同じ人が同じことを聞いてくるのは正直うんざりするんですよね。いい加減自分でやってほしいって思うこともありますよ。自分はヘルプデスクではないし、そのせいで業務が止まって、自分の生産性が下がったら本末転倒ですよ」との返事が返ってきた。できる人とできない人の二極化はそんな問題を生むのか。これはまずい。
そもそもデジタルがなぜ必要か、そして社員全員でデジタルに取り組むことが大事であるということを説明し、正しく理解してもらわないといけない。これが最近よく聞くデジタルマインドの醸成というものか。そこで、「全社員のデジタルマインドの醸成から始めるデジタル人材育成の企画」を整理し説明すると、「企画は理解できたが、マインドを身に付ける研修に忙しい社員の時間を割くというのは抵抗がある。なにより費用対効果を説明できない。」と言われてしまった。
このように、デジタル人材育成を社内で始めようとすると、何から始めたとしても社内から「足りない」「違う」という意見が出てきてしまう。これは少なからずどの企業でも起きているのではないだろうか。なるほど、デジタルスキルの獲得から始めたほうが生産性にはつながりやすい。社員にとっても、実践スキルのほうが成長感を味わえる。調べてみると、全社員IT人材化というキーワードも見つかり、ノーコードツールを使った人材育成を行っている企業もあるようだ。成果を実感できれば、他のツールや知識の習得に向かう人も増えるだろう。そこで、「社内のデジタルツールをみんなで使えるようになるデジタルスキル育成」を企画してみた。すると今度はベテラン社員から、「そういうのを使うのが得意な若手社員がしっかりやってくれるのなら、自分は勉強しなくてもよさそうだ。苦手なことを無理にやるもんじゃない。習得できるかどうか分からないスキルの勉強の時間がもったいない。」という声が上がった。
たしかに若手社員や慣れた人は社内ツールを難なく使いこなす。そういう人たちを中心に人材育成をやればすぐに成果につながるだろう。そこでデジタルが得意な若手社員に聞いてみると、「自分は慣れているからいいですし、できない人の業務を手伝うのもいいんですが、毎回同じ人が同じことを聞いてくるのは正直うんざりするんですよね。いい加減自分でやってほしいって思うこともありますよ。自分はヘルプデスクではないし、そのせいで業務が止まって、自分の生産性が下がったら本末転倒ですよ」との返事が返ってきた。できる人とできない人の二極化はそんな問題を生むのか。これはまずい。
そもそもデジタルがなぜ必要か、そして社員全員でデジタルに取り組むことが大事であるということを説明し、正しく理解してもらわないといけない。これが最近よく聞くデジタルマインドの醸成というものか。そこで、「全社員のデジタルマインドの醸成から始めるデジタル人材育成の企画」を整理し説明すると、「企画は理解できたが、マインドを身に付ける研修に忙しい社員の時間を割くというのは抵抗がある。なにより費用対効果を説明できない。」と言われてしまった。
経済産業省が示すデジタルスキル標準の中のDXリテラシー標準でも、デジタルマインド、デジタルリテラシー、デジタルスキルについてそれぞれ言及があり、いずれも必要なことが分かるが、どれから始めればいいかは記載されておらず、分からないということだろう。
さて、念のためこの三つの定義と違いを整理しておこう。デジタルマインドは、個人がデジタル技術や情報社会に相対するための態度を表したものであり、デジタル世界での活動や行動に影響を与えるものといえる。デジタルリテラシーは、デジタル技術やデジタル情報を理解し、適切に評価・判断でき、活用につなげられる能力を指す。新しい技術や用語が出てきたときでも、個人が自信を持って取り組むために必要な基本的な能力といえる。最後にデジタルスキルは、特定のデジタル技術やツールを使用して、特定のタスクを効率的に遂行する能力を指す。具体的な仕事やプロジェクトを遂行するために必要な能力といえる。
あらためて本題に戻り、どれから始めるべきかということになるが、マインド・リテラシー・スキルの議論は、前述したとおりどれから始めても足りないということをいわれる以上、同時に進めないといけない。しかし、同時に進めるだけの時間もコストもないとなると、進め方は、次の二つだろう。
まず一つ目は、デジタルマインド・リテラシー・スキルの習得計画、すなわち全体像を示すことだろう。これによって「何が足りない」という声は少なくとも消すことができる。そしてもう一つ、どれから始めるかだが、これは組織によって異なる。クイックウィンを求めるならデジタルスキルから、資格取得のようなゴールが進めやすい場合はデジタルリテラシーから、トップダウンのビジョンやパーパスとともに進めるならデジタルマインドから考えるといい。これを間違えると計画がうまく進まなくなる。
全社デジタル人材育成を進めることを否定する企業は随分減ってきたように見える。しかし、うまく進められている企業はまだ多くない。これをきっかけにDXにつながる全社デジタル人材育成を始めてほしい。
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