人材育成コラム
リレーコラム
2026/5/20 (第194回)
「需要は強いのに倒れる」~抹茶とソフトウエア
ITスキル研究フォーラム 理事
東京法令出版 取締役 デジタル事業推進部長
林 裕司
【変化に対応できる企業とできない企業~二極化】
世界的な抹茶需要増で原料(碾茶)が高騰し、生産は抹茶向けへシフト。結果、煎茶原料の供給不足と価格高騰が中小製茶業者を直撃している。好調な企業は抹茶や碾茶の生産に舵を切り、世界的な需要の伸びを取り込んだ。日本では、茶農家の担い手不足と高齢化から茶畑が縮小し、生茶の供給不足が深刻化。大手飲料メーカーのペットボトル用原料の争奪戦も相まって、中小製茶業者は予算に合う原料調達ができなくなった。また、冠婚葬祭(香典返し)需要の急激な減少で、「売る場所」が消失したことも廃業を加速させている。釈迦に説法だが、ソフトウエア業でも環境への対応がポイントとなっている。従前からの多重下請け構造(価格転嫁できない構造)、「収益化までの死の谷」(パッケージ・ゲーム・アプリは先行投資が重く資金化まで時間がかかる)のほか、近年需要が増えているAI活用・モダナイズに投資できる企業とできない企業とで格差が生じている。生産性が上がらないまま賃金だけを上げる企業は経営が厳しくなっている。
【改善策】
環境変化にどう対応していくか。製茶業でも生き残りをかけた動きがある。シングルオリジン、ブランド化、有機・機能性表示などで価格決定力を持つ。単独投資が難しい中小業者では、共同加工・共同物流で固定費を下げる。初期投資補助、段階的承継、若手雇用の仕組み化で「できる廃業」を減らすことなどが行われている。ソフトウエア業ではどのようなことができるのか。人月売りから脱却し、成果ベース(KPI/ROI)契約への移行や下請け脱却のため元請け・直接契約比率の引き上げなどは確実に実施していかなければならない。パッケージはサブスク化、運用・保守・データ活用を含めたLTV最大化へ。そして、共同受注・共同開発でリソース平準化し、小さく作って早く売る(MVP)で「死の谷の在庫(工数)」を減らすことも並行して実施していかなければならない。
廃業増は「不況」ではなく、人手不足×価格構造×事業モデルの限界が原因である。生き残りの鍵は、価格決定力・生産性(AI)・定期収入化・連携。取り方と回し方を変えられる企業が生き残る会社になる。
「生き残り」「業態変容」の最終目標地点を想定した、人材育成、人材獲得をしていく必要がある。





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