人材育成コラム
リレーコラム
2012/03/15 (第25回)
エンゲージメント
ITスキル研究フォーラム 理事
日立ソリューションズ 人事総務統括本部 人財開発部 部長
石川 拓夫
「日本企業がよく注目する親睦会や運動会、懇談会などを行うのは活性化施策で ある。これだけではグローバル競争には勝てない。必要なのはエンゲージメント。 勝つという目標に向かって、社員が会社とエンゲージメントすることが必要だ」
この言葉は、まさに我々の目指すべき方向性を示唆していると思った。
実は個人的にはこの考え方は2004年から模索してきている。社員と会社の 関係を変えないと勝てないという思いは、私も21世紀に入ってから強く持った。 特に2001年に全国的に事業構造改革の動きが高まった時に確信した。
これに対応するために、我が社では2004年からキャリア自律を掲げて HCM(HUMAN Capital Management)を推進してきた。 上位下達の風土(組織に対するロイヤルティー〔忠誠心〕で戦おうとする風土) のままでは、エンゲージメントの実現は難しい。まずは「個の自律」をはかり、 自律した個のパフォーマンスを最大化するマネジメントを確立(「組織の自律」) し、企業風土を変える…。こんな強い思いで絵を描いてやってきた。が、まだ道 半ばである。
またブランド活動で、「この会社で働くことの誇り」こそが顧客に対して最上 のサービスを提供することに繋がり、個人と会社とステークホルダーのWin- Winの関係を築くことになると確信して、インナーブランディング(社員がブ ランドそのものと定義し、どうすれば個人が企業ブランドを体現できるかを考え る運動)を並行して行ってきた。この二つの取り組みは、合併後も引き継いで行 っている。
この考えや取り組みは、まさに社員と会社の関係をより機動性あるものにし、 勝機を高めるものだと考えている。また社員にとっても、自分の生き方を誰かに 白紙委任しない生き方なので、自分らしさや幸福の追求にも繋がると考えている。 実現できれば、自律した社員と会社の関係はまさに対等で、目標を分かち合うエ ンゲージメントの関係になるはずである。
「ついに最も日本的でエンゲージメントにふさわしくない企業の幹部から、こん
な言葉が出るようになったか。グローバル化は本物だ…」
と感慨深かった。今やビジネスはグローバル競争の時代である。グローバル競争へ踏み出すと、 いろいろな関係性が変化していく。今まではこうだったとか、日本はこうだと言 っても、ステークホルダーはそれを認めてくれるとは限らない。働き方や生き方 も変わらざるを得ないのではなかろうか。
変わるためには他社に学ぶことが重要だと思う。成長のためには、個人はまず は自己理解が必要だが、法人も自己理解が必要である。自己理解のためには他者 フィードバックが必要である。いつまでも自分たちの足元ばかりを見て自己正当 化していると、ステークホルダーの評価の外に置かれる可能性がある。
これは組織風土改革には大変大きなポイントだと考えている。
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