人材育成コラム
リレーコラム
2012/10/17 (第32回)
伝統工芸品 井川メンパ
ITスキル研究フォーラム 理事
NECソフト 技術統括部 統括マネージャー 兼)人事総務部 エグゼクティブエキスパート
福嶋 義弘
このCMに影響を受けたわけではないが、最近私は物を購入するときに、それを 意識している。特に鞄がそうで、ヌメ皮製品を好んでいる。ナチュラルで上質感 の高い風合、牛の傷やシワなどの自然な表情、素朴な革の匂い、温かな手触り…。 最も革らしい革といえる。またヌメ革は、廃棄されても土中で微生物などにより 自然に分解され、またその製造工程中に環境を汚染するような有害廃棄物をほと んど出さないと言われている。
ヌメ革の鞄については伝えたいことがまだまだある。しかし、本日のテーマは 井川メンパ、鞄ではない。
井川メンパを知っている方は少ないのではないだろうか。私も半年前にある旅 行番組で初めて知った。メンパとは弁当箱である。日本各地青森県のひばの曲物、 長野県の木曽ヒノキを使用したメンパ、秋田県の曲げわっぱ、三重県の尾鷲杉を 使用した尾鷲わっぱなどがある。
井川は静岡県大井川の上流の山里で井川ダムのほとりにある。今日こそ伝統工 芸品として愛用されているが、江戸時代中期では山仕事に働く人達の弁当入れ、 水入れとして活用された日常品である。桧の薄板を丸く曲げ、重ねた所を桜の皮 で縫い合わせ、底板を漆で接着する。その後、柿渋を数回塗り、漆で仕上げる。 製造工程が難しく、桧物師などの職人によって技術が引き継がれたが、今では職 人も数名となかなか手に入りにくい逸品である。現に私は、注文してから手元に 届くまで6カ月がかかった。是非、伝統工芸を守るため若手職人を育成し後世へ 技術伝承してほしい。
さて、なぜメンパを手に入れたかであるが、生活慣習病に悩む中年としてまず は食生活の改善をと思ったわけである。最近、男性が弁当を作る「弁当男子」が 増加していると言われている。私もその弁当男子を実践しようと、まずは形から と思いメンパの手作りの温かさと漆塗独特のつややかな肌ざわり、詰められたご 飯は冬温かく、夏は腐らず、プラスチックやアルミなどの弁当箱では味わえない ほのぼのとしたおいしさに惹かれたわけである。
あとはどのようなお弁当を作るかである。それは自信がない。「いいもの」は 何とか努力すれば手に入る。「長く」は自分の努力と継続する思いや環境。実は これが難しい。
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