人材育成コラム

リレーコラム

2012/11/15 (第33回)

会議の進め方に現れる企業組織と経営の素性

ITスキル研究フォーラム 理事
フロネシス経営研究所 主宰/富士ゼロックス総合教育研究所 アドバイザリーフェロー

出馬 幹也

会社勤めを長く続ける中で、会議とは何か、会議を上手く進めるためにはどうす ればよいか、ということについて、OJTで少し・・・ではなく、正式に学んだ ことがある人がどれだけいるのだろう?

 驚くべきことにその意味では、ほとんどいない、というのが実態なのではない だろうか。
  ① 参加者が、開催予定時間に、余裕を持って現れる
  ② 参加者が、狙いを知り、事前に資料を読んできている
  ③ 主催者が、笑顔で挨拶し、スムーズに議事に導入する
  ④ 説明者が、簡潔明瞭に話を終え、意見交換に時間を割く
  ⑤ 参加者が、自論を明確に、その場に合わせた話ぶりで示す
  ⑥ 決裁者が、経過を整理し、自分の判断を、根拠を付けて示す
  ⑦ 主催者が、結論と次回までの段取りをその場で迅速に確認する

 例えば、社内に上記のような会議の要綱があったと仮定しよう(そもそもこれ が無い組織も多いが・・・)。一つひとつを当たり前のようにできる組織は明ら かに強い。何かの際に社員が知恵を集めて、迅速に答えを導き出せる素地がある からだ。

 そのような組織は何によって創られるか。経営者のリーダーシップは当然のこ ととして、私自身の経験から申せば、想像以上に“参謀”人材の存在とその力量 に拠る部分が大きい。
 トップマネジメント(=経営者)自身があまり重視していない、事務的な段取 りや部門間調整など、社内の裏方ともいえる業務を担う番頭さんとでも言うべき “参謀”人材は各社に1人は存在する。一方、そのような“参謀”の力量(感性、 能力)もまさに千差万別で、体系だった教育システムなどほぼ存在しない。それ にも関わらず、その企業、とりわけ組織風土という点でその“参謀”の所作に左 右されてしまっている。
 例えば、会議を開催する・しないのそもそも論、参加者選定や進め方などの方 法論、社内決裁のルートや書式に至るまでの手続論など、経営者の眼が十分に行 き届かない範囲はどの企業にもある。まさにそこで、自分の勝手な思いや私的な ルールで足を引っ張っている“参謀”人材の例を、少なからず私は見てきた。

 世の経営者はまずそのような実態の有無を知る必要がある。自分の意に反し、 “参謀”人材が、現場の流れを堰き止めていないか、必要ない会議への参加や準 備を管理職や社員に強要していないか、折に触れ、職場の観察、社員との対話な どを通じて把握していくべきだ。
 同時に、経営者自身もまた、自らの言動を振り返る必要があるだろう。「もっ と調べてから再提案せよ」という指示を口にすることは無いか。その事自体が、 意思決定しない自分の非力を公言してしまっているのではないか・・・など。
 この変化の激しい時代にあって、すべてを見通した情報の整理など望みえない。 お客さまの立場に立ち、直観も駆使しながら判断を下し、物事を前に進めるスピ ード感にあふれた経営を続けるしか方法は無いのである。経営者は常に自らを客 観視し、内省を繰り返さねばならない。

 生産性の高い会議、スピーディな意思決定、状況に合わせ迅速に方向転換する 柔軟さ・・・。経営層から一線級の社員まで、これらのキーワードを胸に、今こ そ社内の実態を冷静に振り返り、変えるべきことを変え、お客さまに選ばれる組 織創りを目指していきたいものである。

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