人材育成コラム
リレーコラム
2014/12/18 (第58回)
競争の激化でさらに活性化する国内クラウド市場
ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
NTTコミュニケーションズ 西日本営業本部 担当部長
中山 幹公
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/090100053/112500040/
こちらの調査の最後の項目で「今後、身につけたい技術分野/テクノロジー」について尋ねたところ、「クラウド/仮想化」がトップとなっている(2位以下は、「情報セキュリティ」「ビッグデータ」「モバイル」と続く)。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/090100053/112500042/?ST=system&P=3
この調査からも、クラウドに関するエンジニアのニーズや期待度が高く、クラウドの進展が全国いたる所で進んでいる様が改めて推察できる。
実際、私が活動している関西でも相変わらずクラウドの引き合いは絶えることがなく増え続けている。ユーザ企業において検討した結果オンプレミスを選択するケースもやはりまだあるのだが、その理由は前回の通信で書いた「鶴の一声」のようなやや理不尽なケースもあるが、その他はソフトウェアライセンスの料金体系が原因だったりするケースが多い。
クラウドに従事している方には説明は不要かと思うが、非常に普及しているOSやDB等のソフトウェアを、クラウド上で使う場合、従来のライセンスをそのまま利用することは許されず、新たなクラウドでの利用を前提としたライセンスに切り替える必要があり、その料金がオンプレミスの場合より高額になるためやむを得ずオンプレミスを選択するというケースである。
このようなライセンス体系は、ソフトウェアベンダーの非常に練られたロックイン戦略によるものであろうが、ユーザ企業のクラウドへのニーズを阻害するような存在になっており、問題視する声も多い。こうした戦略もクラウド化の進展とオープンソースの台頭により早晩転換を迫られることになるかもしれない。
こうした障壁がなければ、ユーザ企業が「クラウドを選ばない合理的な理由」はあまりないのではないかと思える。
では、実際にユーザ企業はどのような会社のクラウドサービスを選択しているのだろうか。
こちらは、日経コミュニケーションが調査した「企業ネット/ICT利用実態調査 2014」が参考になる(ITProでも、12月9日に記事化されている)。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/120200113/120200002/
Saas・Paas・IaaSとそれぞれ国内のユーザ企業に利用しているベンダーを尋ねているが、やはり私が気になるのはIaaSの実態調査である。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/120200113/120200002/?ST=network&P=3
私が従事しているNTTコミュニケーションズのIaaSも第二位と健闘しているが、やはりアマゾン(AWS)さん強し、といった感じだろうか。 この調査結果は、私から見ても自身の肌感覚とは合っており、現在の実態はだいたいこんなものかなと思う(ここで自社のPRをしたいところだが、今回はやめておく)。
今後IaaSの市場はオンプレミスからの流入等でさらなるパイの拡大が予想されるが、一方でおそらく、このグラフの顔ぶれに、近日中には新たな外資系有力プレイヤー等も加わり、ますます激しいシェア争いとなることが予想される。
新たな技術も続々と投下され、競争の新機軸も産まれてくるであろうし、もしかするとプレイヤーの淘汰や合従連衡等も起こってくるかもしれない。
このように目の離せない国内IaaS市場であるが、先日「第三回八子クラウド座談会 in関西」(「八子クラウド座談会」は、同じくこのiSRF通信を連載している八子氏が主宰する座談会で、私は関西の事務局を務めている)が開催され、大阪においてIaaSベンダ12社が一同に会し、プレゼンバトルを繰り広げた。
http://www.zusaar.com/event/11657003
当日は、座談会史上過去最高となる93人の動員となり、大いに盛り上がった。私も登壇させてもらったのだが、各社のプレゼンは、12社それぞれの戦略やアピールポイントを紹介しつつ、ユーモアも交えた興味深いものであった。その後の12人一同に会してのパネルディスカッションでも普段は聞けない本音の話も聞けて、オフィシャルなITイベントではなかなか聞けない内容の楽しい座談会となった。
このようにIaaSベンダー同士は、激しい競争を繰り広げている市場でありながら、結構横のつながりがあり、私も多くのIaaSベンダーのメンバーと親交があり、プライベートな面も含めfacebookで情報交換したり、ときどきお会いする機会もある。
こうした風土は、クラウドが新成長分野だからなのか、はたまたオンプレミスという共通の仮想敵国があり話が合うからなのか、昨今のソーシャルネットワークの拡大とシンクロした結果なのか、おそらくそうした要素が相まって国内クラウド市場は盛り上がっており面白い世界になっていると感じる。
市場の拡大に伴い、この国内クラウド業界を構成する人数も増えてきている。IT業界内でクラウドベンダーへ転職する仲間もいたり、先日は、某大手企業において、事業転換に伴い新たにクラウドの世界に入ってくる数百名の社員の方向けにクラウドに関する研修の講師を担当させていただいた。違うフィールドからクラウドの世界にこうして多くの方々が入ってきて、ますます盛り上がることであろう。
冒頭の話に戻るが、調査対象のエンジニアに限らず、多くのIT業界のみなさんにクラウドの世界の技術やビジネスを身につけて、どんどんクラウドの世界に入ってきていただきたい。業界をさらに活性化し、世界を視野にともに頑張りたいものである。
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