人材育成コラム
リレーコラム
2015/01/20 (第59回)
ITとOT(運用技術)が入り交じるIoT(Internet of Things)時代
ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 委員
シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス シニアパートナー
八子 知礼
最近はメディアで「IoT(Internet of Things)」の文字を見ないことはなくなるほど、昨年の暮れからはこの文字ばかりが躍っています。折しも先日開催されたCES(Consumer Electronics Show)では、ものの見事にIoT関連のデバイスが、または既存デバイスをネット接続化したものが、百花繚乱のように展示されていたと、どのレポートを見ても報告されています。
ITの世界ではIoTを見ながら、たくさんのデバイスをネット接続化させていくのはお手のものだと考えられるかも知れませんが、その実態は極めて地道な「業務オペレーションに根ざした技術によるさらなるイノベーション」に他なりません。いわばそれこそ、ITではなくOTなのです。
スマートファクトリー化のプロジェクトを現在手がけていますが、そこで必要とされるのは工場の生産ラインの極めて現場オペレーションなノウハウや知識です。また、スマートシティの上で提供される様々なサービスを立案するプロジェクトでは、都市インフラを支える裏方のオペレーションにも目を向け、それらが未だ人手に依ってオペレーションされていることの実態に驚くばかりか、その領域になかなかITだけの知識では入っていけないことを痛感しています。
この領域にはIT業界ではある意味当たり前の標準規格が存在しません。今から各インダストリ領域毎に熾烈な標準化争いが起こって順次標準化されていくと思いますが、業務別・用途別に様々な規格が存在し得るのが容易に想定できます。接続性のみならず、実際はその上に多様な業界のオペレーションが載ってくるからです。
さらに様々なデバイスやセンサーなどから上がってくるデータ形式や量もバラバラでデータベースにきれいに収容されるようなデータはあまりありません。その意味でも新たなIT技術や正規化されていないデータを扱う技術はいち早くスキルとして身につけておく必要があります。
加えて、いたるところで出てくるのがセキュリティの問題です。これは今までのPCやモバイルデバイスの比ではありません。センサーにも、ゲートウェイにも、ネットワークにも、プラットフォームにも、アプリケーションにもすべてにセキュリティが求められます。
すべてをインターネットに繋げようという話をしているのですから、ある意味仕方のないことではありますが、細分化されていて、通常のITではなくOTの中でのセキュリティなので、取っつきにくい印象があるのもまた事実です。
インテルがマカフィーを買収することで、デバイス側のチップ手前からサーバー側のチップ手前までエンド・ツー・エンドのセキュリティをおさえたように、どこか片方だけではなく双方をセキュアに担保する必要が常にあることを示しています。
さらに位置情報把握のための規格iBeaconなどの配布でもよく問題になるのが電源の確保や持続性の話です。常時ずっと通信するのですから電源が常時消費されます。iBeacon対応で現在出ているようなバッテリデバイスだと年間に何度も取り替えの必要が生じたりします。また、強電系のシステムをセンサーで監視するといった弱電と強電の併存環境と行ったことも日常的に起こりえます。
すなわち、これまでにもスキルやナレッジの拡充を叫んできましたが、いままで境目があって中々踏み込まなかった専門性の壁を越えて、工場現場のオペレーショナルなナレッジやスキル、セキュリティや強電系のナレッジやスキルといったクロスオーバーが進みます。
「自分はITの人だから」といってクロスオーバーに挑戦しないと、ITとOTが入り交じる「IoT」の時代には当然ながら生き残っていけません。スキルのクロスオーバーを自ら取り入れていく貪欲な姿勢が、今の技術者には求められていると言えるでしょう。もちろん、ここでは述べなかった、ロボティクスなどのメカ系も必要となるでしょうし、アナリティクス分野では脳科学などの生物系などについても今から知見を広げ、スキルを磨いておくことをお勧めします。
ITもいよいよ全方位の時代になってきましたね。
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