人材育成コラム
リレーコラム
2016/06/21 (第75回)
IoTの現場で技術者に求められる5つのスキル
ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG委員
株式会社ウフル 上級執行役員 IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント
八子 知礼
さて今回はIoT(モノのインターネット)を実現する上で具体的にIT領域の方々にスキルや認識として身につけていただきたいことを書こうと思います。とにかくIoTはその幅がインダストリ全体に渡って広く、さらに必要とされるITスキルもいわゆるフルスタック(デバイスからネットワーク、アプリケーション側まで全部)が求められます。その中でもかなり具体的な実案件での経験から、以下の5つをぜひ押さえて欲しいと考えます。
(1)デバイス(特にセンサー)に関するスキル
現実世界の機械、もの、環境をセンシングしてアナログ情報をデジタルに変えるためのセンサーに関する興味と知識の拡充は必須となります。多様なセンサーがありますが、何がどのようなモノゴトのセンシングに使えるのかの勘所くらいは養っておきたいものです。設置の仕方一つとっても上がってくるデータの精度が変わる、設置方法に関してもスキルとなり得ます。
(2)組込開発領域への理解とトライ
IoTで重要なのは既存のITがアプリケーションやネットワーク、サーバーなどのインフラで済んできたのが、今度はITSSとETSSのようにスキル体系でも分離されているエンベデッド領域までの理解が必要となることです。そろそろこれら2つのスキル体系についても統合を検討し始めなければならないタイミングを迎えているとつとに思います。
(3)処理の分担のさせ方に関するスキル
IoTでは集まってきた大量のデータをどこで処理すれば良いかいくつかのオプションがあります。これはクラウドが全盛になってきたからこそのオプションですが、デバイス側(エッジコンピューティングでリアルタイム制御やデータのフィルタリングを行う)~モバイルネットワーク(網内でセキュリティなどの処理を行う)~クラウド側(その系にない大量の他のデータと比較やパターン認識、統計処理を行う)などの考え方があります。データタイプや処理目的、処理負荷によってどこで担うかを分けなければなりません。
(4)環境条件に対する把握評価スキル
前述のようにデバイス~ネットワーク~クラウドでそれぞれのプログラムは正常に動いているのが確認できても中々パフォーマンスが出なかったり、一定時間で接続が切れることもあり得ます。これは環境に原因があることも多く、これまでのITの方々の最も苦手とする分野でしょう。電磁ノイズや輻射熱によってWi-Fiが通らない、データの欠損が多々発生する機器側やセンサーの仕様など、トラブルの原因が環境要因のどんなことから来ているのかをきちんと把握評価できるスキルが必要です。
(5)トライ&エラーを繰り返せるオープンな協業スキル
これは前回の「Collaboration」でも書いたことですが、もはやマインドではなく身につけるべきスキルだと考えています。IoTの時代には、素早く動作する環境やアプリケーションを作ってお客に出してみて効果検証する、ダメなら次のアイデアをどんどん試すという日本企業が最も苦手とするアプローチが必要になります。その際には自社だけで全てをスピーディに担えないのでお互いが持っていることやアイデアをオープンに持ち寄って素早く作り上げる協業スキルが必要となります。
今回はIoTで必要と考えられるスキルを列挙しました。分かっていることも今から取り組むこともあると思いますが、IoTを実現していくのはまさにこれから。各社でぜひ取り組んでいただきたいものです。
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