人材育成コラム

リレーコラム

2017/04/19 (第83回)

日々の『さらけ出し』がチームの生産性を上げる

ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
株式会社NTTPCコミュニケーションズ 営業本部 営業企画部長

中山 幹公

 春は出会いと別れの季節。企業でも人事異動の多い時期である。
 私個人は、異動ではないが、4月から会社での所掌が広がり、新たに新規ビジネス開拓のチームも担当することになった。また、私の所属する組織も、若干のチーム再編成などを行い、それに伴ってチームメンバーの入れ替えやミッションの再整理等も行った。
 読者の皆さまの会社でも同じような組織再編や人事異動等を行ったところもあるかもしれない。

 さて、読者の皆さんの中には人事異動や組織再編等により、自分の所属するチームが変わり、周囲のメンバーが替わったことで仕事の力を急に発揮できたり、また逆に力が出なくなったり……という経験をされた方はいないだろうか。
 人というのは、いかにスキルややる気を持っていても、置かれている職場のチームメンバーやそのチームにおける自分の立ち位置などにより、こうも違うものかというほど、力を発揮できる場合とそうでない場合がある。
 かく言う私もこれまでのキャリアを振りかえると、そのような自分の中での浮き沈みは何度か経験した。
 企業としては、せっかく優秀なスキルを持った人材を確保し、スキルを獲得させたとしてもその人材を配置するチームの状況などにより発揮する力の差があるということは認識せねばならないだろう。場合によっては、メンタル面の不調につながるようなケースもあるだろう。

 これまで個人のスキルを把握することはあっても、個人それぞれが自分の持っている力をどのくらい発揮できているかというのを定量的に見える化するようなアプローチはあまり聞いたことがない。
 しかし、実は個人の持っているスキルを把握するのと同じくらい、いやそれ以上に、「力を発揮できているか度合い」を測ることは重要であるとも思える。
 個人が力を発揮できるかどうかについて、それを左右するチーム環境要因としてはどのようなことが考えられるだろうか。
  • チームリーダーの個性やマネジメント方針
  • チームメンバー間の相性
  • チームメンバー間の業務バランスやまとまり
  • 個人の持っている業務への適性
  • 個人の抱く業務への興味やモチベーション
  • 待遇や労働時間、オフィス環境
 ほかにもいろいろあるだろうが、ではこのような要因が個人の力の発揮度合いにどの程度影響するのだろうか。

 このような疑問へのひとつの答えとして、米グーグル社で自社における数多くのチームの生産性を分析した研究結果(英文)(※クリックで表示)がある。
 また、こちらはその研究レポートを日本のジャーナリストさんがうまくまとめた記事である。
「グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ」(※クリックで表示)
 これによれば、さまざまな観点でチームの生産性に影響を及ぼす有意な要因を調べたがなかなか共通するパターンは見いだせず、唯一浮かび上がってきたのが、「チームの心理的安全性」と言うべき、「チームに安らかな雰囲気が育めているかどうか」だと言う。
 またそうした「心理的安全性」を高められるかどうかのカギは「本来の自分」をそのチームでさらけ出せているかどうかだと言う。もっとも、この調査が本当に正しいかどうか、うのみにできない部分はあるだろうが、自分の過去の職場で思い当たる経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれない。

 仕事とプライベートのスタンスについて、皆さんどうだろうか。
 「仕事とプライベートは顔を使い分けている」という方もいらっしゃるだろう。私自身も、仕事とプライベートはスイッチを切り替えるような発想を入社してしばらくは持っていたのだが、だんだんそのような切り替えをするのはしんどくなり、いつのまにかそうした発想はなくなってきた気がする(もちろん、いわゆる「公私混同」をしているわけではない)。
 また、会社のメンバーだけでなく、IT業界を始めさまざまな社外の人とのつながりが増えてきて、お取引先であり、かつ友人とも言えるような関係の方々とのご縁ができてくるにつれ、社内よりもむしろ社外のつながりの方が自分をさらけ出しているという感じもある。

 では、チームの個人の力をできるだけ発揮して、チーム全体の生産性をあげるために心理的安全性を高めるには具体的にどのような策があるのか。
 個人個人の本来の自分をさらけ出せる関係性……結局は「飲みニケーション」だったりするのだろうか、しかし自分をさらけ出せていない場合の飲みニケーションはもっとつらいだろうし、逆にさまざまなハラスメントの危険も潜んでいる。
 グーグル社のレポート内の一例で、チームミーティングで自分の健康状態のことを告白したリーダーの例があったが(これはこれで生産性以前の問題があると思うのだが……)、そのようなプライベートのことを少しずつでも共有するというのも、ささいな事のようで、意外と効果があるかもしれない。

 私の会社のチームでも、毎日朝礼を行い、当番制でミーティングの司会進行と30秒間のプライベートな話をするようにしており(昨年、私がチームに加わる以前から習慣としていることだが)、意外とその人の違った一面が垣間見られてメンバー間でも好評である。
 案外とこうした日々のちょっとした「さらけ出し」が、一人ひとりの「仕事のしやすさ」や「チームの生産性」につながっているのかもしれない。
 朝、突然順番が回ってきて面倒くさいと思ったこともあったが、そう思わずに、今度からはもっときちんと30秒間のスピーチに向き合い、面白いネタでもいくつか仕込んでおこうと思った今日この頃であった。


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