人材育成コラム
リレーコラム
2017/06/20 (第85回)
第4次産業革命に対応した人材育成
~ITSS+(プラス)のリリースから見る非連続な人材の育成~
ITスキル研究フォーラム データ利活用人材ワーキンググループ主査
株式会社チェンジ 執行役員
高橋 範光
これはデータサイエンスの領域のみならず、セキュリティ領域についてもいえる問題であり、デジタル化が進む時代において、デジタル化の攻めと守りにあたる両方の人材が不足しているということは、IT業界のみならず、日本全体の問題ともいえる。
そのような中、2017年4月にIPA 独立行政法人 情報処理推進機構は、このようなデジタル化の流れを受け、前述した問題に対応するITSS+(プラス)を公表した。今回公表されたITSS+には、データサイエンス領域とセキュリティ領域の2領域が含まれるが、それ以外の領域に関しても今後拡大していく予定だといわれている。
私は、ITSS+の検討に入るとともに、データサイエンス領域のタスクとスキルの定義にも一員として携わってきたが、特にデータサイエンス領域の定義については、これまでにないものをゼロから作るという意味でもチャレンジングな取り組みであった。そして、全方位的に理解している個人が存在しないなかで、データサイエンティスト協会のスキル委員会に所属するメンバーがほぼ毎週集まり、互いに出しあった知恵や意見をまとめ上げて完成したものである。
» IPAのITSS+(プラス)
政府が進める成長戦略の柱として、データサイエンスやサイバーセキュリティなどの第4次産業革命に対応した人材の育成が掲げられている。対象となる人材の候補としてあげられているのは、現在IT企業に勤めるプログラマーやエンジニアなどのIT人材であり、ITSS+で定義したスキルを、新たに“学び直す”ことによって人材を増やしていく考えだ。
IPAは、2002年にITSSの第一版を公開し、ITアーキテクトやプロジェクトマネジメントなどを含むIT業界における11の職種を定義し、それぞれの職種に属する人材が保有すべきスキルやタスク、さらには職種間も含むキャリアパスを示してきた。一方、今回のITSS+は、これまでのITSSと独立してリリースされている。
例えば、データサイエンティストのスキルやタスクの定義、さらにデータサイエンティストの成長のためのパスは見えるが、独立していることで、複数職種をまたぐようなキャリアパスについては明示されていない。その結果、どのような人材がITSS+に定義されたデータサイエンスやサイバーセキュリティとして成長していくべきか参照できないという指摘もあげられている。
しかし、企業だけでなく人材も成長戦略を長期にわたって描くことが困難な時代において、長期のキャリアパスを設計しそのレールに沿って進むことよりも、環境の変化に合わせて非連続かつ柔軟に成長することこそが、目まぐるしい速さで進歩するITに対応していく唯一の方法であろう。そのように考えると、「学び直し」という言葉にも成長の非連続性が読み取れる。
これからのIT人材のキャリアは、先人が歩んだものでなく、自ら切り開いていくものであるといえる。とはいえ、やみくもに進むのではなく、ITSS+で定義されたスキルやタスクを見れば、学び直しの向き/不向きを感じることはできるので、まずは目を通してみてほしい。そして、人材が不足し、引く手あまたであろう第4次産業革命に対応した人材への扉をたたいてみてほしい。
» 参考:「データ利活用人材ワーキンググループ」とデータ利活用人材実態調査2015年、2016年活動報告書
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