人材育成コラム
リレーコラム
2017/08/21 (第87回)
技術者ブログによるスキルアップ
ITスキル研究フォーラム クラウド人材WG 主査
株式会社NTTPCコミュニケーションズ 営業本部 営業企画部長
中山 幹公
実はもともと5~6年前にも一度立ち上げてはいたのだが、開店休業状態になっていたものを大幅リニューアルして、リスタートしたのだ。
私は現在、同社の公式サイトなど広報業務も所管しているため、この技術ブログの運営側、つまり「中の人」である。
私たちが技術ブログをリスタートしたのは、様々なメリットがあると判断したからであり、今回はその「技術ブログ」のメリットについて語っていきたいと思っている。
メリット1 技術者のスキルアップ
ここはITスキル研究フォーラムの運営するコラムであるので、まずは技術者のスキルに関するメリットを一番に挙げよう。
社内には、様々な技術スキルを持ったエンジニアがいる。技術ブログではそうした社内のエンジニアがブログを書くわけだが、彼らの頭の中にある知識を文章化するだけでも、知識が整理され体系化されることで、スキルとしてさらに定着化するというメリットがある。また、ブログを書く時に、自信がない部分や、知識不足な部分をネットなどにより情報収集して、そうして得られた知識をもとに書く部分もある。つまり記事を書いている最中に新たな知識を得ているということだ。
さらには、情報収集力、記事を書くことで得られる文章力など、技術とは異なる部分でのスキルアップも期待できる。
メリット2 技術者の自信や発信力・視野の拡大
ブログを通じ個々の技術者の文章がネットに発信されることで、話題性があり、技術的価値の高いような記事であれば、SNSで拡散されていくこともある。そうすれば、その技術者は自身の持つスキルや、書いた記事の価値に対する世間の評価に気づくこととなり、自信につながっていくことだろう。
また、さらなる技術力習得へのモチベーションとなり、さらに発信力を高め、業界でも有名な存在になったりするかもしれない。そうすれば、その分野に関心が高い様々な人たちが集まるコミュニティーからも声がかかる。そこで講演を行ったり、コミュニティー内でリアルな人脈が形成されたりすることで、その技術者のキャリアにとって大変有意義な環境が形成されていくこともあるだろう。
メリット3 オウンドメディアとしてコンテンツマーケティングに機能
企業が運営するブログは、いわゆる「オウンドメディア」に分類される。技術ブログで自社製品に関する技術をアピールすることで、製品に関心を持った読者から問い合わせがきて、受注につながるようなこともあるだろう。
また、さらに大きな効果として、SEO対策がある。ネットの世界で大きな力を持つGoogle検索の上位表示ポリシーが変化してきているのをご存じの方も多いだろう。ひと昔前は、リンクがたくさん張られているページが上位に表示される時代もあった。しかし、昨今は「コンテンツ主義」と呼ばれ、ネットでよく閲覧される記事を多く抱えているページほど上位に表示されるようになっているといわれている。
つまり企業は、自社のホームページを検索上位に表示してほしいと思えば、ページのコンテンツを量だけでなく質的にも充実させ、それを参照するユーザーを増やしていくことがSEO対策に有効であるということだ。当然ながら検索で上位に表示されるようになれば、そのページから自社へのインバウンドリードが増え、受注も拡大していくことになるだろう。
メリット4 企業にとっての技術力アピール・ファンづくり
技術ブログがオウンドメディアとして機能し始めると、ネットを通じ企業側の技術力アピールにもつながり、その記事を参考にしている読者が増えてくれば、すなわちそれはその企業のファンが増えてくるということだ。それは企業のビジネスに直接メリットをもたらしてくれるだろう。ほかにも、例えばブログ記事を参考に卒業論文などを書いた優秀な学生が、その企業に入社してくれるかもしれない。
こうして様々なメリットのある技術ブログだが、技術ブログで成功している例として有名なのはクラスメソッド株式会社が運営する「Developers.IO」という技術ブログだ(以下のリンク)。
同社は、AWSのインテグレーターとして有名な企業だが、このブログは2011年から運営されており、AWSに関するノウハウ/技術や、Rubyなどに関する記事を多く掲載している。同社の横田社長の講演を聴いたこともあるのだが、同社のビジネスにおいてこのブログは非常に重要なポジションにある。AWSに関して社内に蓄積しているノウハウを積極的に外部に公開することで、案件を呼び込む流れをつくり、同社の事業拡大に大きく寄与しているということだ。正式にアナウンスはされていないが、月間20万PVほどを稼いでいるといううわさもある。
弊社の技術ブログもぜひその域を目指していきたいと思っている。私も最近、技術ブログに記事を一本寄稿しているので、ぜひご一読いただきたい(以下のリンク)。
私は技術者ではないのだが、今後こうした各種ITの勉強会やコミュニティーに参加したり、運営したりした場合、レポートを書いていくことで情報発信したいと考えている。
このように、必ずしも技術者でなくても技術に関する情報発信は可能だと考える。
みなさまの会社でも技術ブログを運営しているところがあるだろうか。もし運営に関わっている方がいたらぜひご一報いただきたい。今度は技術者ブログ運営者の集まる座談会なども企画し、様々な苦労話などを情報交換してみたいところだ。
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